2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物の食害誘導反応がつなぐ植食性昆虫の群集と進化のダイナミクス
Project/Area Number |
10J09260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内海 俊介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 群集-進化ダイナミクス / 生態-進化フィードバック / 食害誘導反応 / 表現型可塑性 / 間接効果 / 群集構造 / 多様性 / 植食者群集 |
Research Abstract |
1.ヤナギルリハムシの適応と遺伝的分化の実態を明らかにするために、国内とフィンランドでサンプルを収集し、野外調査、飼育実験、分子系統解析を行った。その結果、1)寄主植物葉齢に対するハムシ摂食選好性に個体群間変異が両地域内で存在し、その変異が遺伝的基盤を持つこと、2)個体群間変異は環境における寄主植物の可塑的な食害誘導反応の強度に対する適応の結果であること、3)DNAの配列解析から両地域内における個体群間での遺伝的分化が検出され、個体群レベルの局所適応が実際に生じている可能性が高いこと、が示された。また、本種に特異的なマイクロサテライトDNAマーカーの開発が完了し、メタ個体群動態と進化動態の関連性について取り組む準備が整った。2.植食者群集が寄主植物の可塑的な食害誘導反応を介してハムシの適応形質の進化に与える影響を明らかにするため、両地域において植食者群集の調査を行った。それによって、ハムシ適応的な選好性形質の個体群間分化を促進すると考えられる寄主植物の食害応答の変異が、局所環境中の植食者群集の種多様性と強く関連するという結果を得た。3.ハムシの適応形質の変異が植食者群集の構造にフィードバックするという仮説を検証する実験を開始した。野外操作実験によって、適応的な選好性形質の違いが摂食行動の違いに結び付くことによって寄主植物上での食害の空間分布に影響を与え、その結果、寄主植物の食害誘導反応の違いを生み出してその後のハムシ個体群の動態や植食者群集の構造にフィードバックしうるという知見が得られた。以上の結果は、生物群集の種多様性が植物の表現型.可塑性を通して群集メンバーの進化を促進し、さらにそれが個体群・群集動態にフィードバックする可能性を示す極めて新規な成果といえる。これらの成果の一部については、複数の学術論文として発表した。
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Research Products
(10 results)