Research Abstract |
本研究は,シロール誘導体である1,1-ジメチル-3,4-ジ(α-スチリル)シロール(1)を新規合成し,この光誘起電子移動反応でケイ素原子架橋テトラメチレンエタン(TME)型ラジカルカチオン2^<*+>とビラジカル2^<**>を発生させ,これらの分光学的および理論的な評価を目的としている. 平成22年度において,申請書に記載した1年目の研究計画(以下の(1)~(3))を遂行すべく研究を行った.(1)シロール誘導体1の新規合成 現在,基質1の前駆体である1,1-ジメチル-3,4-ジベンゾイルシロールの合成にまで成功している.今後,ただちにWittig反応もしくはPeterson反応等で1を合成する予定である. (2)TD-DFT計算を用いた過渡中間体(1^<*+>,2^<*+>,^12^<**>,^32^<**>)の電子遷移の評価 過渡中間体のうち,一重項種の^12^<**>と三重項種の^32^<**>の時間依存密度汎関数理論(TD-DFT)計算を行いその分子軌道と電子遷移について知見を得た.その結果,^12^<**>の電子遷移は673nmに,^32^<**>のそれは450nmに算出され,互いに大きく異なることがわかった.このことは,^12^<**>と^32^<**>を同時に発生させた場合,それぞれの過渡吸収を容易に区別して観測できることを示している.また,閉殻種である母体シロールと同様に,開殻種であるシロール誘導体^12^<**>のLUMO+1と^32<**>のLUMOおよびSOMOにも同様に,シロール環の2位と5位の間に軌道相互作用が発現するという興味深い知見も得た.これらの成果をまとめた学術論文をJ.Phys.Org.Chem.誌に招待論文として投稿中である.査読の結果,わずかな修正を要求されたのみでありまもなく受理される見通しである. (3)レーザーフラッシュフォトリシス(LFP)を用いた中間体(2^<*+>,^12^<**>,^32<**>)の過渡吸収スペクトルの観測現在のところ,1の合成には至っていないため検討できていないが,1が合成された後,ただちにLFPを用いて中間体(2^<*+>,^12^<**>,^32<**>)の過渡吸収スペクトルの観測を行う予定である.
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