2011 Fiscal Year Annual Research Report
ピンサー型ボリル及びシリルパラジウム錯体を活性種とする多官能性化合物の合成
Project/Area Number |
10J09449
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
喜来 直裕 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ホウ素 / パラジウム / ボリルパラジウム / ピンサー型錯体 |
Research Abstract |
前年度までに、PSiP-ピンサー型ヒドリドパラジウム錯体とジボロンからボリルパラジウム錯体を合成することに成功した。このボリルパラジウム錯体発生法はこれまで報告されていない新規なものであり、本年度はこのボリル錯体生成機構の解明を目的に検討を行った。ヒドリドパラジウム等価体として機能するビス(ο-ジフェニルホスフィノ)シランとPPh_3が配位した0価パラジウム錯体に対して、2倍モル量のビス(ピナコーラート)ジボロンを作用させると、2種類の5配位ボリルパラジウム錯体の幾何異性体が生成することが判明した。反応初期段階では、平面四配位ボリルパラジウムとPPh_3から得られる、シリル基とボリル基がトランスに位置する錯体(トランス錯体)であった。この錯体は時間の進行とともに減少し、これとは別のシリル基とボリル基がシスに位置する錯体(シス錯体)が生成する。DFT計算による反応解析を行った結果、これら幾何異性体は別々の経路で生成することが判明した。トランス錯体はシラン配位0価パラジウム錯体とジボロンがホウ素-ホウ素結合と、ケイ素-水素結合の双方を一挙に切断した後、ボランを放出して生成する。しかしこの反応は吸熱反応であり、逆反応も速やかに進行する。一方、シス錯体は、シラン配位0価パラジウム錯体がケイ素-水素結合の酸化的付加を経てヒドリドパラジウムに変換された後、これがジボロンとσ結合メタセシス様に反応して生成するものであることが判明した。この反応の律速段階はヒドリドパラジウムへの変換反応であり、トランス錯体生成反応よりも高いエネルギーを要する。よって本計算結果はトランス錯体が速度論的生成物、シス錯体が熱力学的生成物である、という実験事実と矛盾しない。 以上の発生経路はいずれもこれまで報告されていない新規ボリルパラジウム発生法であり、本研究はボリルパラジウム錯体の化学を深める非常に意義深い結果である。
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Research Products
(4 results)