2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウス胚着床における神経筋接合部形成因子アグリンの役割
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10J09587
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
寺川 純平 山口大学, 大学院・連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 胚着床 / マウス / 白血病阻止因子 / エストロジェン / プロジェステロン |
Research Abstract |
本研究は、胚着床に必須な白血病阻止因子(LIF)、及びその下流にあるアグリン-アセチルコリン受容体経路を中心に胚着床の機構を明らかにすることを目的としている。着床現象は、胚の子宮内膜への接触・接着・侵入、及び子宮間質細胞の脱落膜化、子宮管腔の閉塞といった一連の反応が、時間軸に沿って進行する。これらは、プロジェステロンとエストロジェンにより制御されている。 本年度の研究では、まず、交配後の卵巣除去により作製する着床不全モデルマウスを用いて、胚着床におけるエストロジェンの作用はLIFにより完全に代償できることを示した。さらに、胚着床におけるプロジェステロン、エストロジェン、LIFの作用を明確にすべく、それぞれがどの段階に必要であるのか考察を行った。胚着床開始時には、子宮上皮細胞の増殖が停止していることから、子宮上皮細胞の増殖の有無を指標とした。子宮上皮細胞の増殖の停止は、プロジェステロンの単独作用で起こり、プロジェステロンの作用で胚の子宮内膜への「接触」までが進行することを明らかにした。さらにLIFとエストロジェンの両者は、「接着」以降の反応開始の刺激となったが、プロジェステロンの作用により停止した子宮上皮細胞の増殖に対しては作用が異なった。すなわち、子宮上皮細胞の増殖の再開は、濃度依存的なエストロジェンの刺激でしか起こらなかった。このことは、胚着床におけるエストロジェンの作用は、胚着床の過程を進めるLIFを介した経路と、それとは異なる経路によって仲介されることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子経路の一つを軸に着床現象の解明に取り組んでいるが、着床機構の既存の概念を変えうる研究成果が出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
胚の移植実験、電子顕微鏡学的観察など、より直接的な証拠を示すことで分子学的経路の裏付けを行い、着床現象の機構を解明する。
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