2012 Fiscal Year Annual Research Report
マウス胚着床における神経筋接合部形成因子アグリンの役割
Project/Area Number |
10J09587
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
寺川 純平 山口大学, 大学院・連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 胚着床 / マウス / 白血病阻止因子 / アグリン |
Research Abstract |
本研究は、胚着床に必須な白血病阻止因子(LIF)、及びその下流のアグリン経路を軸に胚着床機構全体の解明を目的とする。 インターロイキン6(IL6)ファミリーに属するLIFは、種を越えて保存される胚着床に必要な因子であり、マウスの胚着床には不可欠である。我々は以前、HFに対する中和抗体の腹腔内投与により、マウスにおいて胚着床を阻害する簡便な手法を確立した(J Reprod Dev, Vol 57, 2011)。この手法において、抗体投与による阻害効果はマウスの系統により異なり(全て阻害可能な系統および着床数にばらつきが認められる系統が存在する)、胚着床におけるLIFの作用には、実際には系統差があるのではないかと考えた。IL6ファミリーサイトカインの多くは、LIFと同様、LIF受容体とgp130のヘテロ二量体を介してシグナルを伝達することから、IL6ファミリーサイトカインによる相互補完が胚着床の成否を決定するのではないかと仮定した。複数のマウス系統を用いて、抗LIF抗体投与時の子宮内膜でのIL6ファミリーサイトカインの遺伝子発現の変化とHF阻害による効果(胚着床の有無)を解析した結果、必ずしも着床の有無とは相関しなかったが、LIFの阻害によりLIF以外のいくつかのIL6ファミリーサイトカインの発現が有意に増加することが明らかとなった。また、この発現の増加は、抗LIF抗体の投与により胚着床が全て阻害可能な系統では認められなかった。発現の増加したIL6ファミリーサイトカインの組換え蛋白質を作製し、卵巣除去と持続的プロジェステロン投与により作製する着床不全モデルマウスへの投与を行った結果、単独投与により胚着床を誘導可能なものが存在した。LIFが胚着床において重要な位置を占めるのは間違いないが、LIFだけでなくIL6ファミリー全体としての胚着床に対する役割を明らかにすることが、系統差(個体差)を考慮して胚着床機構を解明するために重要であろう。
|