2010 Fiscal Year Annual Research Report
障害物回避歩行運動における大脳-小脳機能連関ループの役割
Project/Area Number |
10J09854
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 祥 東京大学, 大学院・学際情報学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小脳 / 障害物回避歩行運動 / ラット / 運動制御 / 大脳-小脳機能連関ループ |
Research Abstract |
本研究は,ラットの障害物回避歩行運動における大脳-小脳機能連関ループの役割を明らかにすることを目的としている。このような動作は通常の歩行制御に加えて、障害物の高さに応じて適切に肢の軌道を制御する必要がある。本年度では、小脳において大脳皮質、特に一次運動野と密接な関係を有している外側半球部を吸引除去により破壊し、歩行路の両側から高速度ビデオカメラにより記録された動画を元に動作解析を行った。さらに、両側前肢の主要筋群(上腕三頭筋、上腕二頭筋)の筋活動の計測および解析も並行して行った。また、破壊部位の同定はNissl染色を用いて行った。 外側半球部を局所的に破壊すると、通常の歩行には前肢・後肢ともに何ら影響を及ぼさなかった。それに対して、障害物を跨ぎ越す動作では、破壊側前肢がleadlimb(左右足において障害物を先に超える方の肢)として用いられた場合に、つま先の軌道に異常が観察された。この症状は、跨ぎ越しをする際に障害物の真上をオーバーシュートするような軌道を呈するものであり、これは破壊側前肢がleadlimbとして用いられた場合に特異的に観察された。筋電図に関しては、現状十分には解析できていない.また、Nissl染色により小脳皮質外側半球部に加えて小脳外側半球部の主な出力先であり、小脳深部核の一つである歯状核の損傷が認められた。 本研究では、小脳皮質外側半球部および歯状核を破壊すると破壊側の前肢がleadlimbとして用いられた場合に、つま先の軌道に異常が観察された。このことは、小脳皮質外側半球部-歯状核から視床VL-VA核を介して一次運動野へ出力する回路に変化が生じ、それにより皮質脊髄路を形成する一次運動野の活動に影響を及ぼしたと推測できる。従って、今後は筋電図の解析と平行して、外側半球部あるいは歯状核を薬理学的に不活性化した上で、筋活動の計測および一次運動野の神経活動の記録実験を行う予定である。
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Research Products
(1 results)