2011 Fiscal Year Annual Research Report
障害物回避歩行運動における大脳-小脳機能連関ループの役割
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10J09854
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 祥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 歩行 / 障害物回避 / 小脳外側半球部 / ラット / Leading limb / 筋電図 |
Research Abstract |
本研究は、ラットの障害物回避歩行運動における大脳-小脳機能連関ループの役割を明らかにすることを目的としている。このような動作は通常の歩行制御に加えて、障害物の高さに応じて適切に肢の軌道を制御する必要がある。本年度では、小脳において大脳皮質、特に一次運動野と密接な関係を有している外側半球部を吸引除去により破壊し、歩行路の両側から高速度ビデオカメラにより記録された動画を元に動作解析を行った。さらに、両側前肢の主要筋群(上腕三頭筋、上腕二頭筋)の筋活動の計測および解析も並行して行った。また、破壊部位の同定はNissl染色を用いて行った。 外側半球部を局所的に破壊すると、通常の歩行には前肢・後肢ともに何ら影響を及ぼさなかった。それに対して、障害物を跨ぎ越す動作では、破壊側前肢がleading limb(左右足において障害物を先に超える方の肢)として用いられた場合に、つま先の軌道に異常が観察された。この症状は、跨ぎ越しをする際に障害物の真上をオーバーシュートするような軌道を呈するものであった。つま先の軌道に異常が観察される際には、肘関節屈曲主働筋である上腕二頭筋の活動が異常に延長されることが示された。従って、小脳外側半球部は適切な筋活動タイミングの調節およびつま先の軌道生成に関与することが示唆された。 また、経シナプストレーサーを用いて、大脳皮質連動関連領野に対する小脳皮質の投射形式を明らかにする実験を行った。詳細な解析は終了していないが、最終年度に向けた基礎的なデータが得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に対して少し遅れをとっているが、基盤となるデータが得られたこと、また次の実験の予備実験がすでに終了していることを考えると、最終年度に向けておおむね順調に進んでいると考えられる。また、最終年度に行う予定であった経シナプストレーサーを用いた大脳-小脳ループの解剖学的な解析については、予定よりも早く行うことができたため、このような評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画はおおむね順調に遂行されているため、変更はない。今後は、小脳外側半球部の不活性化が障害物回避動作ならびに一次運動野の神経活動に及ぼす影響について調べていく。最終年度の研究計画では、障害物回避歩行運動における小脳の大脳皮質一次運動野の神経活動に対する役割を明らかにすることが目標であることから、上述する研究内容は重要なものになると考えられる。
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Research Products
(3 results)