2013 Fiscal Year Annual Research Report
孝の表象とその機能--東アジアにおける〈二十四孝〉を基点として
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10J09891
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇野 瑞木 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 東アジア / 説話文学 / 二十四孝 / 孝子伝 / 孝子説話 / 漢字圏 / 説話図像学 / 挿絵 |
Research Abstract |
本年度は、平成25年4月に受理された博士論文の成果を踏まえて、その次の段階へと進む足掛かりを得た点で、大いに進展があったといえる。 博士論文においては、本研究の中心課題である二十四孝説話に関して、当初の研究計画の前近代までの現象(とりわけ中世から近世にかけての連続的な現象である追善供養法会における説話利用や御伽草子から版本への流れなど)を主な分析の対象としてきたが、本年度は、博士論文では扱わなかった近世から近代以降にかけての連続的な現象として注目される日本全国の寺社建築における装飾彫刻としての「二十四孝図」および祭りの曳山といった現代にまで至る二十四孝現象へと研究対象をシフトさせることができた。全国の寺社彫刻における二十四孝図の研究は、未だ本格的なものは存在していない上に、全国的な現象かつ近代の前後を跨ぐ現象でもあり、当分野の研究が開拓されることの意義は大きいと考えている。 また、このような対象とする時代を下らせる方向性とは別に、二十四孝の伝播がみられる地域として、博士論文では主に扱うことができなかったベトナムや朝鮮にまで対象を広げて調査を行う足掛かりを築いた。具体的には、ベトナム漢文による説話精読の研究会に月一で参加し、そこでの遣り取りを通して、ベトナムにおける二十四孝や関連説話の存在を確認することができた。 本研究の対象とする時代や地域は、研究課題である二十四孝説話の展開の広さ・豊かさに比例して広範にわたることが避けられないのであるが、しかし一方で各地域・時期に限定的な現象を具に取り上げていくという地道な作業が必須なのは言うまでもない。本年度は、マクロな視点を展開すると同時に、ミクロでローカルな視点を強化していくことを試み、両方向性を持たせることにある程度成功したといえる。 この他、アウトリーチ活動として、二十四孝に関する一般公開の講座(全五回)を開講するなど行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、博士論文を提出した上で、次の研究段階へと進む下地を構築した年であり、当初の計画をおおむね順調に遂行できたといえるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度に得られた研究領域の拡大の足掛かりをさらに確かなものにすべく、日本全国の建築彫刻や祭りにおける曳山などの二十四孝表象の実地調査を重ねていくと共に、その成果を論文の形にまとめることを行う。その際には、これまで中心的な方法論として採用してきた説話文学研究以外の、建築・彫刻・美術史・宗教といった研究分野における方法論や知見を得る必要があるため、さまざまな研究会・学会などにおいて報告・研究発表を行っていくことが肝要と考えている。 また、ベトナムの二十四孝に関しては、今年度はベトナム漢文による説話の精読の作業を進めてきたが、今後必要に応じて字喃(チュノム)を学ぶ必要があるだろう。
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Research Products
(3 results)