2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子ドットの複数励起子の生成初期過程と緩和ダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
10J10028
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 洋一 関西学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オージェ再結合 / 複数励起子 / 量子ドット / 半導体ナノ粒子 / キャリア増幅 / 複数励起子生成 |
Research Abstract |
以下に本年度に実施した研究内容と意義、重要性をそれぞれ述べる。 1.cdTe量子ドット(QDs)におけるオージェ再結合の温度依存性を初めて明らかにした。CdTe QDsのオージェ再結合は非常に緩やかな温度依存性が観測され、オージェ再結合にフォノンが関与している可能性が示唆された。我々の成果は、これまでほぼ理論研究しか行われていなかったQDsにおけるオージェ再結合メカニズムを、初めて実験的に明らかにした例の一つであり、学術的に重要である。 2.CdTe QDsにおける励起子間結合エネルギーを初めて算出した。励起子間結合エネルギーは、ナノ物質のキャリア間相互作用を定量的に評価する有効なパラメータであるにも関わらず、これまでほぼCdSe,CdS QDsのみでしか報告されていない。我々はCdTe QDsにおける二励起子、三励起子結合エネルギーを算出し、それらが励起子ボーア半径の大きさの違いにより、同サイズでもCdTe QDsの方が大きいことを初めて明らかにした。 3.CdS QDsにおいて、オージェ再結合の表面欠陥依存性を幅広い粒径範囲で初めて明らかにした。近年シェルの非常に厚いQDs (giant-multishell QDs)や溶融型QDsなどの界面構造の変化により、オージェ再結合速度を劇的に下げる報告がされたが、QDsの表面状態とオージェ再結合との相関はこれまでいくつかの矛盾が生じていた。我々の成果は、幅広い粒径範囲で実験を行っており、これらの矛盾を解決するための布石となりうる。 4.PbS QDsにおいて、キャリア増幅の発生効率が表面保護剤に依存しないことを初めて明らかにした。 キャリア増幅の発生効率は同じ物質でも報告にばらつきがあり、それらの原因は合成手法や界面状態の違いにあると考えられていた。これらの成果は、キャリア増幅を最適化し、キャリア増幅を用いた高効率第三次太陽電池の開発において必要不可欠な知見である。
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