2010 Fiscal Year Annual Research Report
固体電解質を含むバイアス印加多相界面におけるイオンダイナミクスの第一原理解析
Project/Area Number |
10J10039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠松 秀輔 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際情報交換 / 韓国 / 酸化物 / 固体電解質 / 界面 / 第一原理計算 / ナノデバイス / ナノイオニクス |
Research Abstract |
本年度は、採用後の初年度であることから、採用テーマに関する本な研究に向けた準備期間との位置づけである。界面にバイアスを印加した場合のダイナミクスのシミュレーションの前段階として、主に、下記の2つのテーマについて研究を実施した。金属/ジルコニア界面近傍の空間電荷層の解析 一般に、電荷を持つ伝導種が十分に動ける場合、不連続な界面では電気化学ポテンシャルを一定に保つために空間電荷層が生じ、これによって界面近傍のイオン伝導度が変調する(これはバイアス電圧を印加しなくても生じる)。本テーマでは、第一原理計算によって欠陥生成エネルギーを計算し、連続体のポアソン方程式と組み合わせるマルチスケール解析によって、空間電荷層が酸素分圧、温度、および界面における価電子帯オフセット(VBO)にどのように依存するか調べた。これによって、バイアス電圧をかける前の金属/イオン伝導体界面について、一般的な描像が得られた。 バイアス電圧を考慮するための新規手法「軌道分離法」の関発 第一原理計算レベルで電圧印加を考慮するのは計算時間や精度、考慮することのできる構造に制限があるなどの理由で、現時点では容易ではない。本研究では、金属/イオン伝導体界面の調査に適した新規のバイアス印加法に関する着想を得た。この方法では、金属/絶縁体/金属のキャパシタ構造を想定し、まず、フェルミレベル近傍の一電子軌道を各金属電極に分割する。次に、各電極の軌道を異なるフェルミレベルに従って占有させることでバイアス電圧を考慮する。この「軌道分離法」を汎用第一原理計算プログラムVASPに導入し、Au/MgO/Auナノキャパシタに対してテスト計算を行うことで、方法論の実証を行った。本方法はその効率の良さと実装の容易さ、計算できる構造の多様さから、今後、界面における誘電物性やイオンダイナミクスのシミュレーションに広く応用されることが期待できる。
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