2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体電解質を含むバイアス印加多相界面におけるイオンダイナミクスの第一原理解析
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10J10039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠松 秀輔 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際情報交換 / 韓国 / 酸化物 / 固体電解質 / 界面 / 第一原理計算 / ナノデバイス / ナノイオニクス |
Research Abstract |
グラフェンの量子キャパシタンス 本年度はまず、昨年度開発した「軌道分離法」(第一原理計算によってキャパシタ構造に電圧を印加した状況のシミュレーションを行うための新規手法)が、量子キャパシタンスの解析にも利用できることを示した。グラフェン/真空/グラフェンモデルキャパシタにおいて、印加電圧が小さいときはキャパシタンスがほぼ0で、電圧が上昇するにつれて古典的に予想されるキャパシタンスの値に近づくことが確認できた。これは、グラフェンのバンド構造に起因する量子キャパシタンスで説明できることを示した。本結果と、昨年実施したAu/MgO/Auキャパシタの解析とをあわせて、軌道分離法に関する原著論文を投稿し、Physical Review B誌のEditor's Suggestionに採択された。 金属/酸化物界面の誘電応答 また、当初の計画通り、界面近傍のイオンがバイアス電圧にどのように応答するかについて調べ始めている。軌道分離法を幾つかの金属/酸化物界面に適用し、イオンの誘電応答がバルクとどのように異なるかを調べた。具体的には、SrRuO3/SrTiO3界面近傍において、バルクに比べて誘電率が低下することを確認した。また、BaTiO3などの強誘電体の誘電応答について、興味深い結果を得ており、原著論文を準備中である。 金属/酸化物界面の空間電荷層:Parallel-sheetsモデル 以上に加えて、昨年度行った金属/酸化物界面の空間電荷層の解析に関して、以前採用した連続体モデルより信頼性が高いと考えられるparallel-sheets modelに基づく解析を行い、原著論文を投稿した。酸素分圧、温度、そして価電子帯オフセットに空間電荷層の厚さと極性が依存するという、連続体モデルと概ね同様の結果を得た。ただし、本モデルでは連続体モデルとは異なり、原子層を陽に考慮したシミュレーションとなっているため、より精確な描像が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バイアスを印加した界面について、金属/酸化物界面の空間電荷層や誘電応答の変調に関する新たな知見が得られており、これらに関して複数の原著論文の投稿・採択に至っている。また、本研究の目的に適したシミュレーションを行うために、当初は想定していなかった「軌道分離法」の開発に至り、高い評価を得た(Editor's suggestion)。これまで得られている結果は、当初想定した燃料電池などの電気化学デバイスのみならず、トランジスタやナノキャパシタなどのナノ電子デバイスの分野においても、インパクトのある成果となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
バイアス印加時のダイナミクスー軌道分離法と、分子動力学法あるいはnudged elastic band法を組み合わせて、バイアス印加時に界面近傍でイオンが移動する様子を調べる。 大規模な系におけるマクロな物性予測-動的モンテカルロ法などによりキャリア濃度、拡散係数などのマクロな物性値の予測を行う。
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Research Products
(11 results)