2011 Fiscal Year Annual Research Report
SLC26ファミリーにおけるトランスポーターとチャネルの差異決定機構の解明
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10J10203
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤田 恭輔 富山大学, 大学院・医学薬学教育部(薬学), 特別研究員(DC1)
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Keywords | SLCトランスポーター / イオンチャネル / 塩素イオン / パッチクランプ法 / 胃酸分泌細胞 |
Research Abstract |
平成23年度は、Cl^-チャネルであるSLC26A7とSLC26A9の機能について研究を進めた。SLC26A9のCl^-チャネル機能に重要な機能部位を検討するため、チャネル型(SLC26A7、A9)において保存されているアミノ酸を非チャネル型(SLC26A1、A2)のアミノ酸に変異させた4種類のSLC26A9の変異体(S230R、G299H、R353E、V397K)を作製した。V397K変異体においてSLC26A9由来Cl電流の消失が見られたため、SLC26A9の397番目のバリンがCl^-チャネルとSO_4^<2->トランスポーターの機能差異の決定に重要なアミノ酸である可能性が示唆された。 また、SLC26A9チャネルの機能調節機構について検討した。SLC26A9は胃酸分泌細胞のアピカル膜に発現するため、浸透圧変化および胃プロトンポンプとの機能連関が調節因子として考えられる。SLC26A9発現細胞において、細胞外を高張にすると浸透圧依存的にCl電流の抑制が見られ、細胞外高張による細胞収縮が、SLC26A9の機能調節因子であることが示唆された。胃プロトンポンプを安定発現させた細胞において、SLC26A9のT-RExシステムを導入した。作製した細胞系において、免疫蛍光染色によりSLC26A9が胃プロトンポンプと同じアピカル膜に発現することがわかった。 前年度の研究より、SLC26A7が胃酸分泌細胞の静止膜電位形成に関与する可能性を見出した。本年度は、SLC26A7ノックアウトマウスを用いて、詳細な検討を行った。ノックアウトマウスの胃酸分泌細胞において、野生型マウスより小さなCl電流が見られ、静止膜電位に寄与するCr成分が減少することがわかった。これらの結果より、SLC26A7が胃酸分泌細胞のハウスキーピング機能を担うCl^-チャネルの分子実体もしくは調節因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLC26ファミリーにおけるCl^-チャネル機能とSO_4^<2->トランスポーター機能との差異決定に重要なアミノ酸残基を、SLC26A9変異体の電気生理学的解析により見出した。また、SLC26A9の機能が高浸透圧による細胞縮小により調節されることを見出し、胃酸分泌細胞に発現するSLC26A9の役割を示す知見を得ることができた。ノックアウトマウスを用いた実験により、SLC26A7が胃酸分泌細胞の基底側膜においてハウスキーピング機能を担う分子実体と関連している可能性を見出した。現在これらの研究成果をまとめた論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
SLC26A9の点変異体に関して、V397K変異体がSO_4^<2->トランスポーターとして機能するか検討し、チャネルとトランスポーターの機能変換メカニズムを明らかにする。SLC26A9とH^+,K^+-ATPaseの発現細胞を用い、分子生物学的実験により2分子間の相互作用、電気生理学的実験によりSLC26A9チャネル機能を検討することで、H^+,K^+-ATPaseとの機能連関メカニズムの詳細を明らかにする。また、SLC26A7の細胞防御機能メカニズムを検討する。胃酸分泌細胞の基底側膜Cl^-チャネルは、エタノールによる胃粘膜傷害に対する保護作用に関与すると考えられるため、SLC26A7ノックアウトマウスへのエタノール経口投与後の形態学的評価、組織学的評価、ならびに生化学的、分子生物学的パラメーターの評価を行う。
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Research Products
(5 results)