2011 Fiscal Year Annual Research Report
膵臓酵素に見出した糖特異的結合性の分泌および消化吸収における意義
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10J10385
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
伊達 公恵 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 膵臓酵素 / α-アミラーゼ / 糖タンパク質 / 糖鎖 / スクラーゼ・イソマルターゼ / SGLT1 / DPP4 |
Research Abstract |
【研究の目的】 膵α-アミラーゼ(PPA)の糖タンパク質糖鎖結合性が、膵臓酵素分泌と腸内消化吸収に果たす役割を明らかにする。 【研究の具体的な成果】 (1)グライコプロテオームの方法より、十二指腸刷縁子膜(BBM)におけるPPAの糖鎖リガンドを同定した。その結果、糖質代謝・吸収に関わるスクラーゼ・イソマルターゼ(SI)やNa^+/グルコース共輸送体1(SGLT1)、インレクチンを分解しインスリン分泌を抑制し血糖値調節を担うジペプチジル・ペプチダーゼ4(DPP4)などのN-型糖鎖をもつ膜糖タンパク質が同定された。 (2)ELISAと免疫沈降法より、SI、SGLT1、DPP4はその糖鎖を介してPPAと結合することが示された。 (3)PPAのデンプン分解活性はBBM共存下で増強し、SIのマルトース分解活性はPPAとの結合により増強した。一方、SGLT1のグルコース輸送活性は生理的高濃度のPPAにより顕著に阻害された。 (4)十二指腸の免疫組織染色では、PPAは、4℃でBBMに局在し、37℃で組織内に取り込まれDPP4局在と類似した局在を示した。PPA局在はマンナンにより阻害された。 (5)酵母に発現させアミロース吸着体により精製して得たヒトレコンビナント膵α-アミラーゼは、PPAと同様の糖結合性があることがビオチン化ポリマープローブを用いたELISA法により示された。 【成果のまとめ】 PPAの糖鎖結合性は、SIとグルコース生成を促進する一方で、PPAが高濃度になるとSGLT1によるグルコース吸収を阻害し、組織および血中への急激なグルコース上昇を抑える機能をもつことが明らかになった。またPPAの糖鎖結合性は、PPAが腸組織内へ取り込まれる足がかりとなり、DPP4の関与が示唆された。さらに、膵α-アミラーゼの糖鎖結合性は、ブタだけでなくヒトにも同様に存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時には、PPAの1つの糖鎖リガンドについて解析する予定であったが、SIとSGLT1の2つについての解析を遂行できた。また、組織染色によるPPA取り込み実験と、レコンビナントヒト膵臓α-アミラーゼの精製と糖結合性の実験は、申請時の計画には無い実験であり、新たな知見を得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本研究により得た新たな知見である、PPAの組織への取り込み(エンドサイトーシス)についての研究を進める。具体的には、蛍光標識したPPAを腸上皮細胞Caco-2細胞や十二指腸組織に取り込ませ、経時変化や、エンドソームマーカータンパク質、PPA糖鎖リガンドのDPP4との共局在を調べる。 (2)申請時に計画したPPAの糖鎖認識部位の特定を行う。これまでの検討の結果、PPAは溶解度が低く、PPAIとPPAIIのアイソフォームが含まれていることから結晶化が困難であった。そこで、レコンビナントヒト膵臓α-アミラーゼを用いて特異糖との共結晶化を試み、X線結晶構造解析により糖鎖認識部位の特定を試みる。
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Research Products
(5 results)