2010 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のフォールディングを促進する低分子化合物に関する医薬化学的応用研究
Project/Area Number |
10J10583
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大金 賢司 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Niemann-Pick Type C1 / ニーマンピック病C型 / フォールディング / オキシステロール / pharmacological chaperone |
Research Abstract |
当該年度に得られた成果は、三点ある。一つは、研究テーマの最も重要な仮説を実証できた事であり、二つ目は化合物の活性が想定以上に大きく向上した事、そして三つ目は計画段階で想定していなかった知見が得られた事である。 まず、一つ目の成果について説明する。実証した仮説は、「フォールディング効率の低下しているNPC1変異体のフォールディング効率は、NPC1のリガンドとなるオキシステロール(25-hydroxycholesterol)により向上する。その結果、品質管理機構の通過率が高まり、定常状態でのNPC1変異体の局在は、(フォールディング効率の低いタンパク質に特徴的な)小胞体局在から本来の分布であるエンドソーム局在へと変化する」というものである。 NPC1のGFP融合タンパク質、およびその安定発現細胞株を用いて、オキシステロールのNPC1変異体の(定常状態での)局在に対する作用を調べた。その結果、当初の予想通り、オキシステロール処理により変異体の小胞体局在が野生型のエンドソーム局在へと変化する事を「現象として」見い出した。次に、作用機序が仮説通り「フォールディング効率の向上」であるかどうか解析を行った。作用の発現・消失のタイムコース実験や、タンパク合成阻害剤等共存下での作用解析、糖鎖修飾の状態から仮説を支持するデータを得た。 二つ目の成果について説明する。上述の通り25-hydroxycholesterolに仮説通りの活性が認められた事から、この化合物をリードとして構造活性相関研究を行った。その中から、すでに一桁活性が向上した化合物が得られている(EC_<50>で100-300nM程度)。 最後に、三つ目の成果について説明する。最近になってNPC1のN末端可溶性ドメインの結晶構造が報告され、25-hydroxycholesterolとNPC1のN末端ドメインの結合様式が明らかとなった。そのデータと(二つ目の成果で説明した)構造活性相関データに明確な解離が見られたことから、結合部位が異なる事が示唆され、新たな仮説「オキシステロール結合部位はN末端ドメイン以外にも存在する」を立てるに至った。その検証として、N末端ドメインを欠失させたNPC1を作成して評価を行った。その結果、フォールディング効率向上作用に関わる結合部位は、N末端ドメイン以外の場所にある事を明らかとした。NPC1の具体的な機能がまだ分かっていない事から、ステロール結合部位が明らかとなれば、NPC1の機能を探る重要な手がかりになると考えている。
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Research Products
(3 results)