2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J10626
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠倉 潔 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ATP / 硫化水素 / 蛍光プローブ / 光化学 / 錯体化学 / 蛍光イメージング |
Research Abstract |
本年度は、ATPと同様にシグナル伝達に関与すると報告されている硫化水素に対する高選択的なプローブ開発について取り組み大きな進展を遂げた。 硫化水素は腐卵臭を有する毒ガスとして広く知られているが、生体内では酵素反応により産生され様々な生理作用を示すことが近年明らかになりつつある。具体的には、血管の拡張作用や細菌の抗生物質耐性への関与等が報告されており、硫化水素の産生を調節する化合物は狭心症治療薬や抗菌薬等の医薬品、また研究用試薬の開発につながると非常に期待されている。しかしながら、これらの化合物の探索研究において重要となる「生体内に存在する硫化水素を簡便にとらえる技術」は確立されておらず、研究の進展の妨げとなっていた。そこで、阻害剤等の探索研究に適した、硫化水素を選択的かつ簡便に検出する手法の開発を行った。 私は硫化水素検出手法として蛍光法に着目し、硫化水素と反応することで無蛍光から蛍光性へと変化する色素である蛍光プローブの開発に着手した。そして、硫化水素検出部位として、環状ポリアミンと銅イオン錯体を用いた。本プローブは、生理的な硫化水素に応答し、それ以外の爽雑物に応答しないことが示され、本プロープをHSip-1(Hydrogen Sulfide imaging probe-1)と命名した。本研究成果は、米国化学会誌(JACS)で採択され、多数の学会で講演賞を受賞している。また一方で、特許申請も行われ、商業目的の使用が期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究目的」は、細菌の薬剤排出ポンプの阻害剤探索であったが、現在はそれと同様に注目されている細菌が産生する硫化水素の阻害剤探索に注力をしている。そして、現在までに硫化水素を選択的かつ高感度に検出可能な蛍光プローブを開発しており、阻害剤探索系の構築も整ったので、「(1)当初の計画以上に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞内で産生される硫化水素を可視化すること、また、腸内細菌や口腔内細菌が産生する硫化水素を可視化すること行う。さらに、硫化水素産生を特異的に阻害する化合物をスクリーニングする系も検討中である。
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