2012 Fiscal Year Annual Research Report
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10J10626
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠倉 潔 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ATP / 硫化水素 / 蛍光プローブ / 光化学 / 錯体化学 / 蛍光イメージング / 阻害剤 / スクリーニング |
Research Abstract |
硫化水素は腐卵臭を有する毒ガスとして広く知られているが、生体内では酵素反応により産生され様々な生理作用を示すことが近年明らかになりつつある。具体的には、血管の拡張作用や細菌の抗生物質耐性への関与等が報告されており、硫化水素の産生を調節する化合物は狭心症治療薬や抗菌薬等の医薬品、また研究用試薬の開発につながると期待されている。しかしながら、これらの化合物の探索研究において重要な「生体内に存在する硫化水素を簡便にとらえる技術」は確立されておらず、研究の進展の妨げとなっていた。そこで、昨年度は阻害剤等の探索研究に適した、硫化水素を選択的かつ簡便に検出する手法である蛍光プローブの開発を行った。 哺乳類の生体内でのH_2S産生酵素としては、cystathionine β-synthase (CBS)やcystathionine γ-lyase (CSE)、 3-mercaptopyruvate sulfurtransferase (3MST)が報告されている。また、CBSの選択的阻害剤としてaminooxyacetic acid (AOAA)が、CSEの選択的阻害剤としてpropargylglycine (PAG)が報告されている。一方、3MSTの選択的阻害剤はこれまで報告されていない。そのため、3MSTの選択的阻害剤の開発は、3MSTの生理機能の解明に大きく貢献出来ると考えた。そして、本年度は開発した蛍光プローブの持つH_2Sに対する感度と選択性、水溶性の高さに着目して、3MSTの阻害剤開発を目指して大規模ハイスループットスクリーニングを行った。その結果、3MST選択的阻害剤の開発に成功し、これらの研究成果は多数の学会で講演賞を受賞している。また一方で、特許申請も行われ、商業目的の使用が期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究目的」は、細菌の薬剤排出ポンプの阻害剤探索であったが、それと同様に注目されている細菌が産生する硫化水素の阻害剤探索に注力をした。そして、昨年度までに硫化水素を選択的かつ高感度に検出可能な蛍光プローブを開発しており、本年度は阻害剤開発に成功したので、「(1)当初の計画以上に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞内で産生される硫化水素を開発した蛍光プローブと阻害剤を用いた可視化、また、腸内細菌や口腔内細菌が産生する硫化水素の可視化を行う。さらに、他の硫化水素産生酵素を特異的に阻害する化合物をスクリーニングする系も検討中である。
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Research Products
(8 results)