2011 Fiscal Year Annual Research Report
Stem Cell Agingを誘導するp16遺伝子発現上昇メカニズムの解明
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10J10697
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
吉本 真 公益財団法人がん研究会, がん研究所・がん生物部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 細胞老化 / SASP / 肥満 |
Research Abstract |
本研究は、"幹細胞の老化"やがん抑制機構のひとつ"細胞老化"の誘導因子p16遺伝子の生体内における発現制御機構を明らかにし、加齢に伴う組織幹細胞の老化や、様々な発がんストレスに対するがん幹細胞の発生などの分子機構を明らかにすることを目的とする。 近年、肥満は様々ながんを誘導する強力なリスクファクターとされている。しかし、高脂肪食を30週間与えて肥満を誘導したマウスにはがんは形成されず、高脂肪食だけでは発がんを誘導しないことが示された。一方、我々はたばこの煙やアルコールなど様々な発がん物質にさらされている。そこで、出生後4~5日目のマウスにがん遺伝子HRasを活性化させる化学発癌物質DMBAを塗布し、普通食もしくは高脂肪食を30週間与えたところ、普通食投与群では多くのマウスに腫瘍が形成されなかったのに対し、高脂肪食投与群では全てのマウスに大きな肝腫瘍が形成された。この肝腫瘍形成における細胞老化の誘導について調べるため、生体内での細胞老化をリアルタイムに可視化できるイメージングマウスを用いて同様の実験を行った所、細胞老化の誘導因子p16,p21遺伝子の発現が肝腫瘍部で上昇し、細胞老化が誘導されていることが示唆された。p16,p21遺伝子は腫瘍部の悪性化した肝実質細胞ではなく、間質系のStellate細胞に発現していた。腫瘍部ではStellate細胞が多く含まれており、活性化Stellate細胞のマーカーSmooth Muscle Actinを高発現していた。さらに、Stellate細胞において様々な細胞老化マーカーも観察された。細胞老化を起こした細胞からはSASP(Senescence Associated Secretary Phenotype)と呼ばれる現象により炎症性サイトカインやプロテアーゼが放出される。これらのSASP因子は周囲の細胞に細胞老化を誘導する一方で、悪性化した細胞に対してはがん化を促進する。実際に肝腫瘍部のStellate細胞においてSASP因子IL-6,Gro-α(IL-8のマウスホモログ)の発現が観察された。以上のことから、細胞老化を起こしたStellate細胞からのSASP因子が腫瘍形成を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、肥満による肝臓がん形成促進における細胞老化の誘導とその役割を明らかにすることを目的にしており、これまでにインビボイメージングマウスなどを用いた解析により、細胞老化が誘導されている肝臓内の細胞を特定することができた。さらに、腸内細菌が細胞老化の誘導に関与するという新しい知見を示すことができた。これまで細胞老化は癌抑制機構として考えられてきたが、本研究で得られた結果は、細胞老化の誘導が腫瘍形成に促進的に作用するという新しい概念を示唆するものであり、当初の計画以上の発展を見せていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、肝臓腫瘍部における細胞老化の誘導機構の分子的な解析と、細胞老化が腫瘍形成に与える影響を詳細に解析する予定である。具体的には、メタボロームやマイクロナレイ解析を行って、細胞老化を誘導する因子を特定し、腸内細菌との関係を明らかにする。さらに、細胞老化を起こしている細胞を除去し、腫瘍形成が抑制されるかどうか調べる。また、ヒトの肝臓がん患者の臨床サンプルなどを使用して、ヒトでも共通の機構が存在しているのかどうか調べていく。本研究から肝臓がんの新たな治療戦略に繋がる知見が得られることが期待される。
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Research Products
(3 results)