2011 Fiscal Year Annual Research Report
GABAシグナリング調節分子による摂食調節機構の解明
Project/Area Number |
10J40098
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝上 顕子 九州大学, 歯学研究院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 骨 / オステオカルシン / PRIP / インスリン |
Research Abstract |
PRIPは、我々の研究室で新奇のIns(1,4,5)P_3結合性タンパク質として見いだされた分子である。その後の研究から、PRIPはGAGA_A受容体の形質膜発現量を調節する分子基盤の重要な一翼を担うことが明らかになった。 PRIPノックアウト(PRIP KO)マウスを解析する過程で、雌では加齢に伴う体重の増加がみられたものの、雄ではその体重増加が小さく、やせていることに気がついた。摂食やエネルギー代謝活動は、脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢によって調節されており、GAGA_A受容体を介するシグナル伝達もそこに関与していることが明らかになっている。これらの事実は、PRIPが摂食調節機構やエネルギー代謝調節機構に関わっていること、またその調節過程の一部が雌雄間で異なることを示唆している。 研究遂行に際し、保存していた凍結胚からPRIP-KOマウス個体を作製し、表現型の検討を行ったところ、成獣マウスの体重はPRIP-KOマウスが有意に小さいが、摂食量差はないことが明らかになった。また、糖負荷時の血中インスリン濃度は雌雄共に増加しており、脂質代謝・エネルギー代謝の亢進が認められた上、雌のPRIP-KOマウスで骨量の顕著な増加と、血中オステオカルシン量の増加が認められた。 近年、骨から分泌されるオステオカルシンがホルモンとして膵臓に作用し、インスリン分泌を促し、そのインスリンが再び骨に作用しオステオカルシンの分泌を促すことが明らかになり、骨は糖代謝調節の鍵となる臓器の1つであることが示された(骨・腸・代謝連関)。これに関連し、オステオカルシンが腸管からのインクレチン分泌を促進するということを明らかにした。また、PRIP-KOは野生型と比較してオステオカルシンに対する感受性が低いというデータも得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PRIP-KOを解析する過程で、雌マウスで骨量の顕著な増加と、血中オステオカルシン量の増加が認められた。これらの事実をもとに更に解析を進め、オステオカルシンが腸管からのインクレチン分泌を促進すること、オステオカルシンのインスリン分泌作用がPRIP-KOで認められないことが明らかになった。全身のエネルギー代謝におけるPRIPの役割を解明するという目的は、おおむね順調に達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
オステオカルシンの感受性に野生型とPRIP-KOで差が認められたので、今後はオステオカルシン受容体であるGprc6aのシグナル伝達経路について更に解析を進める。また、糖負荷時のインスリン濃度がPRIP-KOで有意に高く、その後のシグナル伝達もスムーズに行われていないことを示唆する結果を得ているため、インスリンシグナリングの素過程についても詳細に解析を行う。 雌雄差に関してはまだ解決の手がかりが得られていないため、野生型/PRIP-KOで卵巣摘出・精巣摘出手術を行い、性差とエネルギー代謝との関係を探る。
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Research Products
(4 results)