2012 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄間葉系幹細胞の骨格筋分化誘導を利用した細胞遺伝子治療法の開発
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10J40134
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
笠原 優子 独)国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・遺伝子疾患治療研究部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 細胞移植 / 骨格筋 / 骨髄間質細胞 / 筋分化 / 筋ジストロフィー / ジストロフィン / モデル動物 / MSCs |
Research Abstract |
本研究課題では、新たな細胞移植治療法の開発として骨髄間葉系幹細胞(MSCs)の骨格筋分化を誘導し、これを利用して筋線維の再生を促すといった、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対する欠損遺伝子補充型の新しい細胞遺伝子治療法の確立を目指している。これまでに、イヌ骨髄由来MSCsの単離・増殖法、筋分化誘導法を確立し、イヌへの同種移植実験を行うなかで、移植細胞の骨格筋組織における長期的な生着、筋線維形成を示す移植条件を確立している(Kasahara et al., 2012)。本年度は、筋ジストロフィー犬由来のMSCsに治療遺伝子を導入して自家移植を行い、DMDの原因遺伝子、ジストロフィンの発現回復が可能となる移植条件の検討や、全身的投与による広範囲な生着を目的としたMSCsの安全で効果的な投与方法の検討を行った。 筋ジストロフィー犬由来CD271陽性MSCsは、正常犬と同様の細胞増殖能を示し、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞への分化能を有していた。ジストロフィンの最小機能領域、マイクロ・ジストロフィン遺伝子を導入したDMD犬由来MSCsを同一個体へ局所投与したところ、8週後にジストロフィン発現筋線維が確認できた。また、動脈内投与による同種移植を行った場合、MSCsは炎症を有する筋組織へ集積し、12週の長期にわたって生着が可能であった。この筋線維は筋分化マーカー、ミオシン重鎖を共発現するため、再生時期の筋線維であることが示唆された。他の組織への生着は認めず、移植犬の全身的な副作用は認められなかった。 以上より、MSCsの自家移植法および、炎症を伴った筋肉組織への生着および筋線維形成を可能とした移植条件を確立した。今後さらに、MSCsの抗炎症作用による治療効果や安全性を検証することにより、筋線維再生を目的とした細胞移植法のみでなく、抗炎症療法としての実用化も期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、筋ジストロフィー犬自身への自家移植実験を行い、同種移植のみならず、自家移植においても基礎的条件を確立することができたことから、将来的にMSCsの筋分化能を利用した筋ジストロフィーに対する移植治療への可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果において、MSCsの全身投与により炎症を伴った筋肉組織への生着が確認できたことから、MSCsによる炎症制御作用を解析し、抗炎症効果を兼ね備えた細胞移植治療を検討する予定である。
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Research Products
(11 results)