2011 Fiscal Year Annual Research Report
経鼻免疫による膣粘膜抗原特異的免疫応答誘導機構の解明
Project/Area Number |
10J40185
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 あゆ子 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 粘膜免疫 / 膣粘膜感染症 / 膣粘膜指向性関連分子 / エフェクターT細胞 / ケモカイン / インテグリン |
Research Abstract |
一個所の粘膜関連リンパ組織に抗原投与することで遠隔の粘膜面に抗原特異的免疫応答が誘導されることは現象論として知られているものの、その分子・細胞機構については不明であった。本研究では、抗原の経鼻免疫および点眼免疫によって遠隔の膣粘膜において抗原特異的免疫応答が誘導される分子・細胞機構を明らかにすることを目的とし、膣粘膜感染防御に必須であるエフェクターメモリーCD4T細胞の誘導組織から膣粘膜組織への移動および局在の制御機構について解析し、それらの知見を利用した性感染症に対する新世代粘膜ワクチンの開発への基盤研究を遂行してきた。23年度は、本研究において作製したEGFP発現ヘルペスウイルス2型(HSV-2)を経鼻免疫したマウスを免疫組織学的解析法、HSV-2特異的プライマーを用いた定量PCR法およびin vitro共培養系を駆使して解析した結果、1)HSV2が鼻腔粘膜上皮細胞に感染・増殖すること2)鼻腔粘膜樹状細胞がそのウイルス抗原を補足・処理した後頸部リンパ節において未感作CD4T細胞に抗原提示すること3)誘導されたHSV2特異的エフェクターCD4T細胞が膣粘膜やその所属リンパ節へ移動するという、エフェクターT細胞誘導と動態機構について細胞生物学的知見が得られ、最終年度の研究の基盤が確立された。エフェクターT細胞の膣粘膜指向性分子機構についても、経鼻免疫したマウスの膣粘膜組織CD4T細胞がケモカインレセプターCXCR3およびインテグリンβ1を高発現していた。CXCR3については、欠損マウスを解析した結果、膣粘膜抗原特異的CD4T細胞数が野生型マウスと比較して有意に低下しており、ケモカインレセプターCXCR3が膣粘膜指向性決定分子の有力候補の一つであると考えられた。さらにこれらの結果をウイルス抗原特異的エフェクターT細胞のみに焦点を当ててより詳細に解析する目的で、HSV-2抗原特異的MHCクラスIIテトラマーの作製が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膣粘膜防御免疫応答に必須であるエフェクターT細胞を誘導し、その膣粘膜指向性を解析するための経鼻免疫マウスモデルが確立し、投与したウイルス弱毒株の局在、エフェクターT細胞の誘導組織、および出現の経時変化も明らかとなった。エフェクターCD4T細胞に発現している膣粘膜指向性分子(ケモカイン、インテグリンなど)についても候補が絞り込まれ、そのうちケモカインレセプターCXCR3についてはその遺伝子欠損マウスにおいてエフェクターCD4T細胞数の減少が確認され、その重要性が示唆された。計画に従い順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
抗原特異的エフェクターT細胞をin vitroおよび個体レベルで解析するために抗原特異的MHCクラスIIテトラマーを用いる。他研究者により免疫原生が高いと報告されていたHSV2由来糖タンパク質gDの構成ペプチド(gD245-259:KPPYTSLLPPELSD)は、本研究で用いているウイルス株とマウスモデルにおいては免疫原性が低いことが明らかとなった。したがって、HSV-2を経鼻免疫したマウスよりHSV-2由来抗原に対して反応性の高いエフェクターT細胞を選択してT細胞ハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマが認識するペプチド配列を決定してMHCクラスIIテトラマーを新たに作製することに決定し、現在速やかに進行中である。
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Research Products
(1 results)