2012 Fiscal Year Annual Research Report
医療デバイスに対する力学的・生物学的応答評価を可能とする血管バイオモデルの構築
Project/Area Number |
10J40210
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冨田 典子 東北大学, 流体科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 循環器系疾患 / 医療デバイス評価 / 血球モデル / 膜孔タンパク質 / 膜強度変化 / 脂質形状 / 平面脂質二重膜システム / Cryo電子顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究においては、多くの国において重大な疾患である循環器系疾患の医療デバイスの開発に貢献するために、デバイスの評価を可能とする血管および血球バイオモデル開発をめざしている。昨年度は、赤血球膜に特異的に作用して膜の物性を硬化・脆弱化させることが可能なブドウ球菌の膜孔タンパク質Hlgに着目し、患者の状態を反映した膜強度多様化赤血球モデルの開発の可能性を検討した。血球モデルとして脂質二重膜小胞を利用するため、脂質に対するHlgの反応性を解析した結果、Hlgは脂質膜には孔を形成しにくく、かつ膜上で凝集体を形成する性質があり、扱いが困難であった。そこで本年度は、異なる2つの膜孔を使用して、様々な脂質への膜孔の反応性を解析し、脂質の種類と膜孔の濃度変化から、膜強度を制御する可能性について検討した。 大腸菌膜孔タンパク質FhuA、またはキノコ由来膜孔タンパク質Plyと平面脂質二重膜システムを使用して、数種の脂質膜上での、膜孔形成効率とその安定性を試験した。その結果、シリンダー型脂質膜上に形成されたFhuA膜孔は、より安定にopen状態を維持できることが明らかとなった。Plyの場合は、脂肪酸の炭素鎖が18以上の構造を有するスフィンゴミエリン膜上にのみ膜孔形成が認められた。また、FhuAは、反応系に30ng/ul以下、Plyは4ng/uL以下の濃度で添加することにより、膜孔数を計測できることが示唆された。さらにCryo-TEMを使用して、Plyの高分解画像を取得することに成功し、Plyの孔径が、FhuAおよびHlgより2-4倍大きく、Plyは膜の脆弱化により影響を与えると示唆された。本研究結果から、膜孔の種類と濃度、脂質の種類を変化させることで、膜上の膜孔の数と性質に多様性が生じることが明らかとなり、膜強度多様化血球モデル開発の重要な基礎データとして活用できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に引き続き膜強度多様化血球モデルの開発を目指し、新たな膜孔タンパク質FhuAおよびPlyを用いて、様々な脂質に対する膜孔形成活性を解析した。本年度は、PLBSと新しい膜孔タンパク質を用いて、(1)脂質二重膜上に形成された孔数を計測するシステムが構築され、(2)脂質と膜孔タンパクの種類、および適切な濃度を用いることで、膜孔の数を制御しながら多様な膜孔を形成できる膜システムの基盤が構築された。以上のように本年度は膜強度多様化血球モデルの実現化にむけた重要な基礎データを取得することができ、平成22年度、23年度におこなった血管モデル、血球モデル開発と合わせ、本研究目的はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)脂質を変えて作成した二重膜小胞(リボソーム)に、PlyおよびFhuAを、濃度を変えて作用させ、平面脂質二重膜システム(PLBS)に本リボソームを融合させることで、膜上に形成された膜孔数を計測するシステムを構築する。PLBSへのリボソームの融合が困難な場合には、透過型電子顕微鏡を使用して、面積あたりの膜孔数をカウントし、リボソーム1個あたりの膜孔数を算出する。(2)膜とタンパク質間の相互作用機構を解明するために、Cryo電子顕微鏡を使用してリポソーム膜上に形成された膜孔の高分解像を取得する。本電子顕微解析は、膜の脆弱化に汎用性が高いと思われるPlyに焦点をあてて行う。(3)膜孔の数と膜の破壊条件を検討する。膜の破壊は透過型電子顕微鏡で確認する。膜が破壊しない条件で膜孔が形成されたリボソームの膜強度をマイクロピペットで解析する。
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Research Products
(12 results)
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[Remarks] Mohammad Mohammad : (Research Assistant Professor)and Noriko Tomita (Visiting Postdoc) : invited video-conference talks at the International Conference of Fluid Dynamics 2012(ICFD2012). Noriko chaired a session titled "Membrane Micro Channel for Health Care," during which the two talks were given Sendai, Japan (September 19-21 2012). SU Physics News-September 2012, Presentation by Research Faculty, Posdoc and Student, Syracuse University, The College of Arts and Science, Department of Physics, Noriko Tomita (visiting research associate) : presentation, "Fundamental study for development of blood cell model with various membrane strength by a combination of phospholipid and poreforming protein" at the 21st JSPS (Japan Society for the Promotion of Science) Gathering Meeting held in Consulate-General of Japan in Boston. In this meeting, professors, post docs and students who have studied in the United states under JSPS grants gather to show their works and discuss to share scientific and general information (October 26, 2012). SU Physics News-October 2012, Presentation by Research Faculty, Posdoc and Student, Syracuse University, The College of Arts and Science, Department of Physics, Noriko Tomita (visiting scholar in Liviu Movileanu's lab) invited presentation, "Electrophysiological Study of Membrane Channel Proteins on Various Membrane Environment and Application for Cell Model" in Syracuse University and Tohoku University (Sendai, Japan)Joint Meetin, Grants Auditorium in SU (November 8, 2012) SU Physics News-December 2012, Presentation by Research Faculty, Posdoc and Student, Syracuse University The College of Arts and Science, Department of Physics,