2011 Fiscal Year Annual Research Report
群体性ボルボックス目を用いた多細胞化に伴う形態形成機構の進化の分子基盤解明
Project/Area Number |
10J40216
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊岡 博子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 群体性ボルボックス目 / 緑藻 / クラミドモナス / ボルボックス |
Research Abstract |
本研究課題は、単細胞緑藻のモデル生物クラミドモナスと、クラミドモナスに近縁で多細胞化の過程の中間的段階の生物が現存する群体性ボルボックス目を用いることで、単細胞生物が多細胞化したのに伴って獲得された形態形成機構がどのような分子進化過程を経て生まれたのかを解明することを目的とする。この群に特徴的な形態形成運動「インバージョン」における細胞突起形成に機能する新規リン酸化タンパク質InvDに関しては、データの取得および論文執筆を完了し、前所属長の指示を仰いでいる状況にある。 平成23年度は研究テーマを発展させ、群体性ボルボックス目における多細胞化の初期段階に着目し、細胞同士の連結に必須な原形質連絡の獲得や細胞外基質成分の進化の分子メカニズム解明に向けての基盤整備を開始した。具体的には、次世代シークエンサーによる群体性ボルボックス目全ゲノム解読(日・米・南アフリカによる共同プロジェクト)の一端である、4細胞性のテトラバエナ、および8-16細胞性のゴニウムの全ゲノム解読プロジェクトに参画した。またテトラバエナおよびゴニウムにおいて、エレクトロポレーションによる簡便/高効率な形質転換系の開発を開始した。 また平成23年度から、群体性ボルボックス目における多細胞化に伴う形態形成機構の進化の典型的な事象の一つである、有性生殖時の配偶子融合様式の進化に関する研究も開始した。具体的には、上記のゴニウム全ゲノム解読から得られた配列情報を活用して、配偶子融合に機能し、真核生物の幅広い系統において保存されている雄性配偶子特異的膜タンパク質GCS1のゴニウムオルソログ遺伝子GpGCS1 cDNA部分配列を決定した。さらに半定量RT-PCR法により、マイナス交配型配偶子においてのみ、GpGCS1遺伝子発現量が顕著に上昇することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画からの変更はあるものの、多細胞化に伴って進化した形態形成機構を分子レベルで解明するという目標に向かって確実に前進している。特にGCS1に関しては、全ゲノム情報を活用することで、GCリッチのため単離が困難であった状況を打開できた点が大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴニウムGCS1に関しては、cDNA全長配列を決定するとともに、現在作成中の抗GCS1抗体を用いて、タンパク質の発現解析および細胞内局在解析を行い、その結果を国際誌に発表する予定である。さらに、抗GCS1抗体を用いた免疫沈降による相互作用因子の探索を行う予定である。また、テトラバエナおよびゴニウムにおける形質転換系の開発に関しては、細胞外基質および細胞壁の除去法を検討し、薬剤耐性遺伝子やGFP遺伝子、さらには内在性の有性生殖関連遺伝子の導入を目指す。
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Research Products
(4 results)