2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ粒子複合構造における多励起子状態とエネルギー移動過程の研究
Project/Area Number |
10J55312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田口 誠二 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 半導体ナノ粒子 / 超高速分光 / 高密度励起状態 |
Research Abstract |
半導体ナノ粒子複合構造における多励起子状態のダイナミクスを、ポンプ・プローブ過渡吸収分光法と時間分解発光スペクトル分光法により研究した。既存の測定系を拡張し、可視から近赤外までの広い波長域において過渡吸収スペクトルを測定する実験系を構築し、研究に用いた。 磁性イオンとしてMn^<2+>イオンをドープしたCdSナノ粒子において、励起子-磁性イオン間の相互作用に起因するMn^<2+>イオンへのエネルギー移動時間を調べた。そして多励起子状態のオージェ再結合とエネルギー移動とが共存する場合のキャリアダイナミクスを解明した。Mn^<2+>イオン濃度の異なる試料について比較することで、電子正孔対の支配的な再結合過程はキャリア密度に依存しており、低密度においてはMn^<2+>イオンへのエネルギー移動が、高密度においてはオージェ再結合が支配的になることを発見した。さらにこの結果に基づき、Mn^<2+>イオンからの発光強度の励起光強度依存性がオージェ再結合とエネルギー移動との単純な競合によって決定されていることを明らかにした。高効率な発光材料として期待されている発光中心ドープした半導体ナノ粒子においても、多励起子状態のダイナミクスが発光効率を決定する重要な要因であることを示した。さらに、十分にエネルギー移動速度が速い試料においてはオージェ再結合を抑制できる可能性があることを示した。また外部環境としての磁性ナノ粒子が半導体ナノ粒子の光学特性に与える影響を研究するために、半導体/強磁性体ナノ粒子複合薄膜を作製した。Ar/H_2ガス雰囲気中でアニーリングすることにより、粒子間相互作用を増強することに成功した。長さの異なるCdSeのナノロッドにおけるオージェ再結合速度を測定し、粒子表面の与える影響を研究した。オージェ再結合確率は、発光減衰寿命から見積もった正孔の表面欠陥準位へのトラップ確率と明確な比例関係にあることを見出した。
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