2010 Fiscal Year Annual Research Report
硝酸蓄積硫黄酸化細菌の機能と湖沼生態系における物質循環への関与の解明
Project/Area Number |
10J56032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
根本 富美子 北海道大学, 大学院・環境研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 硫黄酸化細菌 / 硝酸還元 / 微生物生態学 |
Research Abstract |
硝酸を細胞内に蓄積する硫黄酸化細菌は、環境中の窒素および硫黄の循環への寄与が大きいと考えられている。しかし、純粋培養が得られておらず、その寄与の正確な程度は明らかになっていない。また、淡水環境の硝酸蓄積硫黄酸化細菌に関する知見は少ない。本研究では、主に北海道千歳市に位置する淡水湖であるオコタンペ湖より採取した試料を用いて、Thioplocaの生理学的特性および物質循環への関与の解明を目指した。酸素呼吸能の検証では、Thioploca試料付近で大きな酸素濃度の減少が確認された。実験に用いた試料には他の生物が混入している可能性があるため、今後、得られた結果がThioplocaに由来することを証明する必要がある。硝酸還元の最終産物特定のため、分子状窒素への還元について検証を行った。アセチレン阻害法による実験では、用いた試料による分子状窒素への還元を示す結果は得られなかった。分子状窒素への還元経路に関わるnirS遺伝子のダイレクトシーケンスより得られた配列は、オコタンペ湖と琵琶湖の試料では系統的に異なり、Thioploca由来ではないと考えられた。硫黄酸化に関わるaprA遺伝子のDGGE解析およびクローニング解析から、Thioploca由来と考えられる配列が得られた。オコタンペ湖と琵琶湖に生息するThioplocaは、堆積物表面ほど現存量が多く、その現存量は非常に狭い範囲において2桁近く異なったが、同地点の間隙水および堆積物の特性に大きな変化は見られなかった。オコタンペ湖およびドイツの淡水湖であるコンスタンツ湖では、複数種のITS領域の配列を持つThioplocaが同所的に生息していることが明らかとなった。オコタンペ湖と他の湖沼に生息するThioplocaに付着しているバクテリアの間に共通性が見出され、Thioplocaと付着菌の間に何らかの相互作用が存在することが示唆された。
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