2010 Fiscal Year Annual Research Report
電子輸送現象、光学スペクトルを用いた鉄系超伝導体における電荷ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
10J56172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 正道 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 電子輸送現象 / 光学スペクトル / 電荷ダイナミクス |
Research Abstract |
現在、多くのバリエーションが発見されている鉄系超伝導体の中でも、BaFe_2As_2を母物質とする物質群、特にBa(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2に関しては単結晶育成が比較的容易であることから、多くの研究が行われている。本研究では、電子輸送現象・光学スペクトルの測定から鉄系超伝導体の電荷ダイナミクスを系統的に解明することを目標としている。この目標に鑑みて、Ba(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2以外の物質でも様々な測定を行えるように、他の物質についても単結晶育成技術の向上を目指している。本年度の研究の進展は以下の通りである。 (1)母物質BaFe_2As_2の非双晶化の技術を向上させ、双晶のない状態で光学測定を行った。低温斜方晶相では、格子定数の大きいa軸方向にスピンが反強磁性的に並び、格子定数の小さいb軸方向にスピンが強磁性的に並ぶにもかかわらず、電気抵抗率はb軸のほうが高いという直感に反した振舞いを見せるが、光学スペクトルの解析により、この電気抵抗率の異方性は異方的なギャップに起因するものだということを突き止めた。また、フォノンモードが異方的に現れるという特異な現象を発見し、鉄系超伝導体の母物質の低温相では、今までに例を見ないような異方的な電子状態が実現していることを示した。 (2)今まで単結晶の育成が困難であったBaFe_2(As_<1-x>P_x)_2について、すべてのP濃度の組成の単結晶試料育成に成功した。現在、輸送現象の測定を行っているところであり、今後の研究の広がりが期待される。
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