Research Abstract |
1.パルスレーザー堆積(PLD)法を用いて,SrTiO_3単結晶基板の上に,電気伝導性の高いSrRuO_3のエピタキシャル薄膜を成長させることに成功した.SrRuO_3薄膜の厚さは30-50nm程度であり,平滑性は,SrTiO_3(100,111)上に成長させた場合に特に優れ(RMS値<1nm),単結晶基板と同等の平滑性を有した.SrRuO_3は集電体として働くだけでなく,基板材料のSrTiO_3と同じペロブスカイト型構造を有し,その格子定数も極めて近いため,エピタキシャル関係を保ったまま電極材料の積層が可能である。リチウム電池電極材料を堆積させることで,SrTiO_3基板の低い電気伝導性の影響を排除し,かつエピタキシャル薄膜の利点(異方性,ナノ効果など)を用いた電気化学測定が可能となる.また優れた平滑性は,X線や中性子を用いた反応のその場観察の選択肢を広げ,測定精度を向上させる.エピタキシャル薄膜電極の電気化学特性を正確に評価することは,人工超格子電極の構造と電極特性の相関を調べる上で極めて重要である. 2.1で得たSrRuO_3/SrTiO_3(111)の上にスピネル構造を有する正極材料LiMn_2O_4(111)をエピタキシャル成長させた.その上に固体電解質Li_<0.5>La_<0.5>TiO_3をエピタキシャル成長させ,充放電中の固固界面における電極の結晶構造変化をその場観察した.Out-of-plane測定で検出した電極内部の構造は,リチウム脱挿入に対応した格子変化を示した.また,in-plane測定で検出した固固界面のLiMn_2O_4は,電極内部と同様に可逆的な格子変化を示した,Li_<0.5>La_<0.5>TiO_3を積層させていない,LiMn_2O_4の(111)の固液界面における変化は,電池作製時に表面原子配列が一度乱れ対称性が低下したのちに,充放電過程において再配列して,対称性が回復することが知られている.このことから,Li_<0.5>La_<0.5>TiO_3を積層させることで,電極最表面の原子配列が安定化することが示唆された.積層による表面構造の挙動をその場観察した報告はこれまでなく,今年度の成果として電極表面の反応機構に関する新たな知見をもたらした.この知見は,今後,電極を数層重ねて電極を作製する上で,重要な設計指針となり得る.
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