Research Abstract |
パルスレーザー堆積(PLD)法を用いて,SrTiO_3(111)単結晶基板の上に,電気伝導性の高いSrRuO_3のエピタキシャル薄膜を成長させ,さらにその上にリチウム電池正極材料LiMn_2O_4エピタキシャル薄膜を合成した.薄膜電極は111配向しており,膜厚が25-40nm程度,電気化学試験から可逆的なリチウム脱挿入反応を確認した.得られた電極上に固体電解質Li_3PO_4,Li_<0.5>La_<0.5>TiO_3を数nm堆積させた修飾電極を合成し,電極上に固体/固体界面を形成した場合の電極反応機構を調べた.本研究での最終目的である,多くの固体/固体界面を有する人工超格子電極の合成と反応理解には,2種類の固体材料が界面形成した場合の反応機構を明らかにすることが重要であり,目的に適した電極の合成に成功した.Li_3PO_4,Li_<0.5>La_<0.5>TiO_3を修飾することで,電極構造が変化し,未修飾電極に存在する電極表面におけるリチウム過剰領域の形成が抑制されることを明らかにした.さらに表面修飾により電極表面のマンガンが低価数化も抑制されることが分かった.電極/電解質による固固界面形成によって,空間電荷層が形成され,電極構造が変化することを確認した.修飾電極の電気化学特性は未修飾電極と大きく異なり,充放電過程における不可逆容量が低下して反応の可逆性が向上することを明らかにした.表面X線回折法を用いて電極構造変化のその場観察を行った結果,表面修飾によって電極内部,表面ともに充放電中に未修飾電極と異なる挙動が観測された.固体電解質によって固固界面を形成することで,電極表面だけでなく電極内部構造変化にも影響を与えていることが分かった.このことから,表面修飾による電気化学特性向上が,電極の結晶構造や電子構造変化,表面だけでなく内部構造が変化することが関与していることを明らかにした.さらに,LiMn_2O_4以外の電極材料として,LiFePO_4,Li_4Ti_5O_<12>,Li_2MnO_3,Li_2RuO_3のエピタキシャル薄膜合成条件の検討し,電極薄膜の積層を行った.Li_4Ti_5O_<12>とLiMn_2O_4を積層させた場合には,合成温度の差があるために十分な配向性や結晶性を有する積層電極を得ることが出来なかった.今後,積層時の合成条件探索を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の最終目標である,人工超格子薄膜電極の合成と特性評価に向けて必要な準備がほぼ整っている.合成に必要な製膜条件の最適化,単結晶基板の処理方法,集電体薄膜の導入と合成条件最適化はおおむね順調に進んでおり,既に積層薄膜の合成にも着手している.さらに,各電極の充放電中の挙動や表面修飾効果の詳細が明らかになりつつあり,予想以上の成果があがっている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに得られた結果や蓄積された技術をもとに,超格子薄膜電極の合成を推し進める.電極を多層に重ねる際の条件最適化が目下の課題である.それぞれの最適条件の中から条件が類似しているもの,電極の結晶構造から予想されるミスマッチが小さい電極同士の積層を行う.得られた超格子電極に対する評価を行い,電気化学特性,物性などあらゆる観点から特に興味深い性質に関して探求する.
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