2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア産オナガコバチ科の包括的同定システムの構築
Project/Area Number |
10J57071
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 和典 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 寄生蜂 / 分類 / 寄主範囲 / 害虫 / 天敵 |
Research Abstract |
害虫管理研究に重要な、寄生蜂の生活史や寄主情報はこれまで、十分に収集・蓄積されてこなかった。そこで本研究では、重要な天敵資源であるオナガコバチ科の寄生蜂を対象に、その生活史や寄主範囲を解明し、包括的同定システムを構築することを目的としている。具体的には、寄主候補となる虫こぶ形成昆虫を採集・飼育した。採集は、昆虫の発育ステージが老熟幼虫~蛹の時期に重点的に行った(この時期にオナガコバチが寄生するため)。害虫種に関しては、農業試験場関係者と連携して採集を行った。また、採集で得られた個体に加え、大学などの研究機関所蔵の標本を用いて比較検討を行った。さらに、塩基配列の比較により各種の生活史や寄主範囲、分布情報をとりまとめた。平成22年度の実績は下記のとおり。 1、世界的な害虫種の天敵寄生蜂の国内からの発見 世界的なクリの害虫である、クリタマバチの天敵寄生蜂として知られていた、Torymus koreanusを日本から初めて発見し、国際誌に発表した。本種の形態情報や分子情報、分布情報が追加された。これらの情報を組み合わせることで、クリタマバチが発見され、天敵寄生蜂が得られた場合、応用の現場で迅速な対処が可能になると考えられる。 2、オナガコバチ包括的同定システム構築のための新知見 オナガコバチ科は日本から11属52種が記録されていた。しかしながら、国内外での野外調査や、研究機関での標本調査から、少なくとも12属73種が発見された。上述のTorymus koreanusを含め8種についての日本からの新分布記録、13未記載種が発見された。これらの新知見によって、より正確な同定システム構築が期待できる。
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