2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア産オナガコバチ科の包括的同定システムの構築
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10J57071
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 和典 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 寄生蜂 / 寄主範囲 / 分類学的再検討 |
Research Abstract |
害虫管理研究に重要な、寄生蜂の生活史や寄主情報はこれまで、十分に収集・蓄積されてこなかった。そこで本研究では、重要な天敵資源であるオナガコバチ科の寄生蜂を対象に、その生活史や寄主範囲を解明し、包括的同定システムを構築することを目的としている。今年度の実績は以下のとおり。 1、Monodontomerus属オナガコバチの寄主範囲の確認 本属はチョウ目の幼虫-蛹寄生蜂として知られており、日本では7種の本属オナガコバチが記録されている。中には、マツカレハなどの林業害虫に寄生する種など、天敵資源として考えられる種が含まれている。今年度の調査から、日本産7種について、計18件の新寄主記録が得られた。寄主としてチョウ目だけでなく、コマユバチやヒメバチなど、チョウ目幼虫の1次寄生蜂に高次寄生していることも明らかになった。また、寄主範囲について、M. osmiaeのそれはOsmia属のみ、M. minorは複数目にわたるなど、種ごとに寄生戦略が異なっていることが示唆された。 2、Megastigmus inamuraeの再発見と分類学的位置について 本種は1912年北海道産カラマツ球果から羽化した1メスに基づき記載された。原記載論文では、本種の色彩のみが記述され、形態的な特徴は不明であった。そのため、分類学的な再検討の必要のある種であった。しかし記載後、タイプ標本が戦火によって焼失し、検討されていなかった。今年度、約90年ぶりに北海道産カラマツ球果からM. inamuraeが採集され、新たなタイプ標本の指定が可能となった。また、本種の形態的特徴が明らかとなり、他種との比較研究も可能になった。欧州には、オウシュウカラマツの球果に寄生するM. pictusが記録されている。現在、M. inamuraeとM. pictusの詳細な比較検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までの調査から、日本産オナガコバチの寄主記録や未記載種の発見など、多くの新知見が得られている。また、計画とおり、分子系統解析のデータも蓄積することができていることから、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに、非常に多くの新知見が得られている。そのため、今後は、得られたデータをとりまとめ、論文作成に取り組む予定である。
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