1999 Fiscal Year Annual Research Report
快・不快感情を喚起する言語情報に対する認知特性とその機構に関する研究
Project/Area Number |
11111212
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 洋典 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (40178504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 隆司 国立長寿医療研究センター, 生体機能研究部, 主任研究員
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Keywords | 感情 / 抑鬱 / 自伝的記憶 |
Research Abstract |
快・不快感情を喚起する言語材料として,大学生の自伝的記憶を用いて,それらの項目に対する快・不快判断課題を実施し,判断に要する反応時間を測定した.集団実験に被験者として参加した大学生は,まず10項目から成る抑欝傾向を測定するための検査(CES-D)を受け,次に30分にわたって誕生から高校3年生の3月31日までの期間における自伝的記憶を想起し,その想起項目を書き出すことを求められた.さらに各被験者は自らが想起した想起項目に対する快不快評定を求められた. これらの一連の集団実験が実施された約1ヶ月後に,先に案施されたCES-D検査によって,抑鬱性が高いと判断された被験者(HD群)と低いと判断された被験者(LD)が,快・不快判断実験に参加した.HD群とLD群の被験者に呈示される快・不快項目は,各人が想起した項目と,他人が想起した項目とを同数ずつ含み,それらはCRT上にランダムに呈示された.被験者の課題は,それらの項目に対する快・不快判断をkey押し反応によって行うことであった. 実験の結果,本人が想起した項目に対する快不快判断は,他人の想起項目に対するそれよりも速く,両想起項目において,LD群の快・不快判断がHD群のそれよりもが速いことが確認された.しかし,本人の想起項目に対しては,両群において快項目は不快項目よりも速く判断されるが,他人の想起項目に対しては,逆に不快項目が快項目よりも速く判断されることが確認された. 以上のことから,自己に関連する快情報の検索は,不快情報よりも速く,この傾向は高抑欝群の被験者における不快項目に対する反応の遅延として顕著に認められる.しかし,高抑欝群の被験者が,自己に関わる不快情報を含む項目の検索処理に時間を要するのか,あるいは不快項目を自らの記憶であると認めるための判断に時間を要するのかについては,なお検討の余地が残されている.
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