1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11111219
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
針生 悦子 青山学院大学, 文学部, 助教授 (70276004)
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Keywords | 語彙獲得 / 日本語 / 幼児 / 概念の階層構造 / 下位カテゴリー名 / 材質名 / 分類学的カテゴリー原理 / バイアス |
Research Abstract |
たとえば、犬は「犬」であると同時に「動物」でもあり「ペット」でもある。このように、1つの事物に結びつけることのできる語は無数にあり、それらは、上位-下位のカテゴリー関係にあったり、色-材質のように異なる側面をとらえていたり、複雑な関係をなしている。すなわち、既に名前のわかっている事物を指して、さらに新奇な語が発せられた場合、その語の意味としては、いくらでも可能性を考えられるということだ。そして、これは、ことばを学びつつある子どもがまさに直面している事態なのだ。子どもはここでどのようにして、新奇な語の意味を学んでいくのだろうか。 これについて、英語圏の研究では、語が提示されるその文法的枠組みを参考にして子どもは語の意味を推論することが示されてきた。というのも、英語では、事物の名称は普通名詞、材質の名称は物質名詞といった文法的区別が存在するからだ。しかし、日本語はこのような文法的区別を持たない。日本語児は、このような事態にどのように対処しているのか、すなわち、語の意味として考えうる無数の可能性を前にただただ途方にくれるだけなのか、それとも、既知の事物に新しい語が結びつけられたらその意味としてはある特定タイプの概念を優先して考えるというようにして、うまく事態を切り抜けているのか。この問題について検討した結果、日本語児は、既知の人工物に結びつけられた新奇な語を、その材質の名称というよりはむしろ、既知の事物名称の下位カテゴリー名と解釈する傾向があることがわかった。ここから、日本語児は、語が事物のどのような側面を指すのかを、その語が埋め込まれた文法的枠組みから知ることはできないにせよ、どういう状況で(たとえば既に名前のわかっている事物を指して)語が提示されたら、それに結びつけるべきはどのような概念か、について仮定を持ち、学習にのぞんでいるらしいことが明らかになった。
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[Publications] 針生悦子: "既知の事物に与えられた新規な語を子どもはどう解釈するのか"文部省科学研究補助金特定領域(A)「心の発達」平成11年度研究成果報告書. 199-204 (2000)
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[Publications] Haryu, E. & Imai, M.: "Controlling the application of the mutual exclusivity assumption in the acquisitiom of lexical hierarchies"Japanese Psychological Research. 41(1). 21-34 (1999)
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[Publications] Haryu, E. & Imai, M.: "Controlling the application of the mutual exclusivity : How do Japanese children assign a meaning of a novel word for a familiar artifact?"Proceeding of the 2^<nd> International Conference on Cognitive Science and the 16^<th> Annual Meeting of the Japanese Cognitive Science Society Joint Conference. 406-411 (1999)
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[Publications] 針生悦子・今井むつみ: "幼児は何にもとづいて語の階層構造を形成するのか"日本教育心理学会第41回総会発表論文集. 152 (1999)
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[Publications] Imai, M. & Haryu, E.: "Word learning without and from syntax : How do Japanese children learn proper nouns and common nouse?"Proceedig of the 23^<rd> Annual Boston University Conference on Language Development. 277-288 (1999)
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[Publications] 日本児童研究所(編): "児童心理学の進歩1999年度版"金子書房. 281 (1999)
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[Publications] 繁田 進(編): "乳幼児発達心理学"福村出版. 197 (1999)