1999 Fiscal Year Annual Research Report
歯の形態にもとづく個体レベルでの解析による先史・原史時代日本列島住民の地域性と系譜
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11112225
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
松村 博文 国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (70209617)
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Keywords | 歯 / 形態 / 縄文人 / 地域性 / 礼文島 / 港川人 / 先史東南アジア / スンダドント |
Research Abstract |
今年度は縄文人に焦点を当て、縄文人の地域性と系譜について集中的な分析をおこなった。まず、礼文島の船舶遺跡から28体にもおよぶ保存の良い縄文人骨を収集した。地理的にも北方からの大陸系集団の遺伝的影響が注目されるところであるが、歯のみならず頭蓋や四肢骨も明らかに本州の縄文人とさほど変わらないことが明らかになった。また、縄文人は全国的にも例外なく大臼歯に対して著しく小さな小臼歯をもつという特徴を共有することが確認された。しかも、中期以前の遺跡の人骨や港川人などにおいても同様の特徴がみられ、後晩期の縄文人と系統的に連続していることが示唆された。先史東南アジア人の中で、縄文人の頭蓋および歯の形態にある程度の類似がみられたは、新石器時代のインドシナ半島の集団である。縄文人独特の高く反り上がった鼻骨をもつ集団はないが、低顔で眉間が突出するなど多くの形態において良く類似していた。このことから、後期更新世から完新世初頭にかけて、縄文人に近縁なグループが揚子江以南のアジア大陸辺縁地域に広く分布していたものと推測された。また縄文人の歯は新石器以降の東南アジア人の歯とともに、その形態はターナーのいうスンダドント型ではあるが、オーストラリア先住民、メラネシアの集団やホアビニアン文化期の東南アジア人などのオーストラロ・メラネソイド系集団がもつ本来のスンダドント型とはやや異なり、どちらかというと北方アジア系のシノドントとの中間的ともいえる形質をもっていることが明らかになった。このことから縄文人ならびにそれに近縁なアジア大陸南部辺縁地域の新石器時代集団は、オーストラロ・メラネソイド系集団を母体とし、多少ながらも北方アジア系と混血したオーストラロ・モンゴロイド系集団に属するものと考えられた。
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[Publications] Matsumura,H. & Zuraina,M.: "Metric analyses of an early Holocene human skeleton from Gua Gunung Runtuh, Malaysia"American Journal of Physical Anthropology. 109. 327-340 (1999)
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[Publications] Matsumura,H. et al.: "Comparative study of the ealy Holocene Perak man from Malaysia with the prehistoric and modem Australians and Southeast Asians"Perspective in Human Biology. 4. 121-126 (1999)
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[Publications] Matsumura,H. et al.: "Dental Morphology of the Early Hoabinian, the Neolithic Da But and the Metal Age Dong Son Cultural People in Vietnam"Zeutschrift fur Morphologie und Anthropologei. (印刷中). (2000)
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[Publications] 松村、博文: "瀬戸内,東海および関東地方縄文人の歯牙計値における時期間,遺跡間および個体間変異"国立科学博物館専報. 32. 175-187 (2000)
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[Publications] 松村、博文・姉崎、智子: "礼文町船泊遺跡より出土した縄文時代後期の人骨"船泊遺跡、礼文町教育委員会. (印刷中). (2000)