1999 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物超伝導体におけるボルテックスとピン止め中心の電子状態のNMRによる研究
Project/Area Number |
11129211
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 助教授 (90215492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深瀬 哲郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90005900)
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Keywords | NMR / ボルテックス / 第二種超伝導体 / 高温超伝導体 |
Research Abstract |
タリウム系高温超伝導体TIM_2CaCu_2O_<7-δ>(M=Ba, Sr) は、キャリヤ濃度をCaサイトの三価イオン置換、あるいは酸素欠損によって反強磁性相から過剰ドープ域まで広範囲に調整可能(最適ドープにおけるT_cは120K程度)である。本研究では、この系におけるボルテックスの電子状態とイントリンシックな元素置換によるピン止めの効果を調べるため、Cu/T1-NMR の測定を行っている。 第二種超伝導体の渦糸状態では、磁束が貫通した常伝導コア内部では超伝導領域に比べて化学ポテンシャルが高くなっているため、この隣接した2相を平衡状態に保つための空間電場が必要である。これを作り出すための余剰電荷Q〜ε_0Δ^2/eε_Fがボルテックス内に現れる。「低キャリヤ密度」を特徴とする「高温」超伝導体では、この余剰電荷が実験的に検出可能なくらいに大きくなると期待される。 一般に原子核位置の電場勾配はオンサイトの波動関数と周囲の結晶場によって決定される。高温超伝導体のCuサイトの電場勾配は、オンサイトの波動関数の寄与が支配的であることが判っている。これは逆に云えば、Cuサイトの電場勾配を測定することで、Cuサイトの局所3dホール濃度が判ることになる。電場勾配はNMRスペクトルのシフトとして現れるが、ナイトシフトと区別するため、複数の磁場領域で測定し、両者の磁場依存性の違いを利用して分離を行った。図1に示すように超伝導転移温度以下で電場勾配(∝ν_Q)の顕著な減少が見られる。これがボルテックスのcharge up によるものかどうかは、零磁場でのNQRスペクトルの測定と会わせて、現在検討中である。
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