1999 Fiscal Year Annual Research Report
キラルフラーレン類の円二色性スペクトルと絶対立体化学
Project/Area Number |
11133207
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大澤 秀一 東北大学, 反応化学研究所, 助手 (00291055)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 宣之 東北大学, 反応化学研究所, 教授 (30006324)
|
Keywords | フラーレン / キラリティ / 絶対立体化学 / 円二色性スペクトル / 力場計算 |
Research Abstract |
フラーレン誘導体は結晶化が困難な物質系であり,光学活性なC_<60>誘導体に至っては未だにX線構造解析による絶対構造の決定が行なわれた例は無い.現段階での絶対構造の決定法は我々が提案した,計算化学の手法による構造予測,および予測された構造に基づいて計算された円二色性スペクトルを実測円二色性スペクトルと比較することによって行なわれている.しかしこれらは分子力場計算における立体エネルギー値を根拠に絶対立体化学を推定しているという問題点が残っていた.力場計算は十分に信頼できる方法であるが,下記の方法によってより確実に絶対立体化学を決定する研究を行なった.二重 Bingel 反応により任意のつなぎ鎖をC_<60>に付加させると,付加位置によりC_<60>母骨格が光学活性となることがある.1,3-dioxolaneのbis-malonateと C_<60>の付加物は用いるdioxolaneの立体が位置選択性を高め,これが(4S,5S)の場合(S,S^f,C),(4R,5R)の場合は(R,R^f,A)のみがそれぞれ合成される.そこで,位置選択性を低め,単一スキームから両方のジアステレオマーを得るために柔らかいと思われる1,2-ethanediolのbis-malonateを用いたところ,互いにジアステレオマーの関係にある誘導体を同時に合成することが出来た.生成比は約5:1であり円二色性スペクトルは鏡像関係であった.これらのNMR結合定数,NOE,化学シフト値を分子力場計算から求めた2つのジアステレオマーの安定配座と比較した結果よく一致し,2つのジアステレオマーの絶対立体化学を明かにすることが出来た.これにより,分子力場計算の立体エネルギー値あるいは円二色性スペクトル法とは独立にキラルフラレーンの絶対立体化学を決定することが出来た.また上述のこれまでの絶対構造の決定法による結果と矛盾しなかった.
|
-
[Publications] Nagatoshi Koumura: "Synthesis, Circular Dichroism and Absolute Stereochemistry of 1, 1', 2, 2 ', 3, 3', 4, 4'-Octahydro-3, 3'-dimethyl-4, 4'-biphenanthryl"Enantiomer. (印刷中).
-
[Publications] Shinji Murai: "Shynthesis, Circular Dichroism, and Absolute Stereochemistry of a Fecht Acid Analog and Related Compounds"Enantiomer. (印刷中).
-
[Publications] Yusuke TAJIMA: "Efficient Preparation of Poly-Oxygenated [60]Fullerene"Molecular Crystals and Liquid Crystals. (印刷中).
-
[Publications] R. W. J. Zijlstra: "Chemistry of Unique Chiral Olefins. Part 4. Theoretical Studies of the Racemization Mechanism of trans- and cis-1, 1', 2, 2 ', 3, 3', 4, 4'-Octahydro-4, 4'-biphenanthrylidenes"Journal of Organic Chemistry. 64・5. 1667-1674 (1999)