1999 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起励起子移動を経由して高効率的に生成する高スピン共役電子系の創出
Project/Area Number |
11133215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40192447)
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Keywords | 増感光分解 / エネルギー移動 / 電子移動 / 多重項有機分子 |
Research Abstract |
本研究は、増感部位が捕捉した光エネルギーを、エネルギー移動、あるいは電子移動過程を経てスピン前駆部位に伝達し、スピンを持つ特異な共役電子系を効率よく発生させることを目的としている。本年度は、増感部位として分子内にピレン基を持つ基底五重項ジカルベン前駆物質(1)の合成が完了し、その極低温マトリックス中、および室温溶液中の光反応を検討し、その分解過程に関する知見を得ることができた。1を2-メチルテトラヒドロフラン中、4Kで366nm光を照射し、電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、五重項ジカルベンの発生が観測された。光量を変化させてジカルベンの生成速度を調べた結果、一光子で二個のジアゾ基が分解していることが判明した。一方、1をメタノール中、室温で366nm光を照射し、生成する化合物の構造を調べたところ、1の二個のジアゾ基は段階的に分解し、しかもピレンに隣接するジアゾ基が優先して分解することが明らかになった。また、1の光分解速度は、ピレン基を持たない類縁ジカルベン前駆物質の同一条件下の光分解速度の10倍程度であった。以上の結果から、1のピレン基は光吸収部位として作用して1のジアゾ基の分解効率を向上させ、さらに環境の異なる二個のジアゾ基に分解選択性を与えることがわかった。また、極低温マトリックス中では、ピレン基によって捕獲された光エネルギーは、ジアゾ基に効率よく伝達され、二個のジアゾ基の分解を引き起こすことが判明した。これらの結果は、光による高スピン有機化合物の高効率的な発生の可能性と、分解するジアゾ基の数を用いる波長によって制御できる可能性を示唆するものである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Shigeru Murata: "New Findings in Photochemistry of ρ-Nitrophenyl Azide in the Presence of an Amine: Generation and Trapping of Enamines"Chemistry Letters. No. 7. 597-598 (1999)
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[Publications] Sigeharu Wakabayashi: "Self-Assembly of 3-[4'-(Diethylboryl)Phenyl]pyridine and 3-[3'-(Diethylboryl)phenyl]-pyridine: Synthesis, Structural Features, and Stability in Solution"Journal of Organic Chemistry. Vol. 64 No. 19. 6999-7008 (1999)
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[Publications] Shingo Ikeda: "Remarkable Effect of Electron Acceptors on Pyrene-Sensitized Decomposition of N-Phenylglycine"Chemistry Letters. No. 10. 1009-1010 (1999)