1999 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合とπ-d電子系を組み合わせた自己組織化金属錯体の構築と機能
Project/Area Number |
11136217
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
増田 秀樹 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (50209441)
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Keywords | 水素結合 / ハイブリッド / 自己組織化 / 分子設計 / 金属錯体 / π-d電子系 |
Research Abstract |
有機π電子共役系と金属のdπ電子系をカップルさせることにより、それぞれが本来持っている物性と異なる新しい機能の発現が期待できる。本研究では、遷移金属錯体に水素結合能を付与することにより、互いに異なる錯体分子が自己組織化する外場応答機能性金属錯体の設計・創製を試みた。その一つとして、Cu(II)ビオルル酸-Mn(III)ビグアニダド系三重水素結合ネットワークの形成により発現した特異な酸化還元挙動について報告する。[Mn^<IV>(enbg)(OH)(H_2O)]と[Cu(va)_2]の1:1系についてエタノールでの挙動を検討したところ、そのUV-vis、IR、ESR等において興味深い結果が得られた。即ち、これら2者を1:1で反応させると、直ちに沈殿が析出した。このIRスペクトルを観測すると、C=0伸縮振動およびN-H伸縮振動の低振動シフトが観測され、それらの間に水素結合が形成されていることが示唆された。また、この溶液の吸収スペクトルを追跡するとCu(II)のd-d遷移の短波長シフトが観測された。さらに興味深いことにこのESRスペクトルは1:1でCu(II)に特徴的なシグナルが消失した。この現象は1:1複合体を形成することによってCu(II)がCu(I)かCu(III)に還元または酸化されたことを示唆している。更に、この系のESRスペクトルの注意深い観測を行ったところ、Mn(IV)に特徴的なスペクトルが観測され、別に合成したMn(IV)錯体のESRスペクトルと全く同じスペクトルパターンを示すことが分かった。このことから、ビグアニダド錯体とビオルル酸錯体との間でプロトン移動を伴う三重水素結合を形成し、その結果、電子移動を起こしたものと考えられ究めて興味深い現象である。この系はそれぞれの酸化還元電位から考えると極めて妥当で、水素結合しプロトン移動を伴うことによってそれぞれの金属の酸化還元電位に影響を与え、電子移動を容易にしたものと考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] H. Kitamura: "A New Strategy toward Contribution of Organic-Inorganic Hybridized Molecules. An Infinite One-Dimensional Chain Structure Assembled with Hydrogen- and Coordinate-Bonds"Chem. Lett.. 1999. 1225-1226 (1999)
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[Publications] H. Kitamura: "Syntheses, Structures, and Properties of Tetrakis(m-acetato)-dirhodium(II) Complexes with Axial Pyridine Nitrogen-Donor Ligands with and/or without Assistance of Hydrogen Bonds"Inorg. Chem.. (印刷中). (2000)
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[Publications] N.Ohata: "水素結合配向性に制御されたアルギニン金属錯体の秩序構造体の形成"高分子論文集. (印刷中). (2000)
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[Publications] N.Ohata: "Dianion-controlled Supramolecular Assembly of Copper(II)-arginine Complex Ion"Inorg. Chim. Acta. (印刷中). (2000)
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[Publications] H. Kitamura: "Unique self-organization System Formed between Biguanidato and Biuretato Complexes with Triple Hydrogen-Bonds"Mol. Cryst. Liq. Cryst.. (印刷中). (2000)
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[Publications] H.Masuda: "有機-無機ハイブリッド材料技術資料集"技術情報協会. 8 (1999)
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[Publications] H.Masuda: "Precision Polymers and Nano-Organized Systems"Kodansha Scientific. 4 (1999)