1999 Fiscal Year Annual Research Report
dmit系金属錯体の微視的研究:磁気構造と電荷局在状態
Project/Area Number |
11136257
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
中村 敏和 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (50245370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 利宏 学習院大学, 理学部, 教授 (60163276)
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Keywords | 有機導体 / NMR / ESR / 金属-絶縁体転移 / 反強磁性 / フラストレーション |
Research Abstract |
我々はdmi t系導電性金属錯体に着目し、その低温電子状態を明らかにするため微視的な観点から研究を行っている。とくに、固体広幅NMRは非常に有力な実験手法であり、分子生物においては、これまで^1H核に対する測定が為されてきた。しかし、dmi t系では伝導電子密度大きいアニオン分子上には^1H核は存在せず、常磁性相の知見を得るには至らなかった。本研究課題では、今回その限界を克服するため、NMR測定にかかる^<13>C同位体置換試料を作成し、^<13>C-NMR測定から伝導電子に関する直接的な情報を得ることを試みた。 dmit系金属錯体の代表的な塩の^<13>C同位体置換試料についてNMRスピン格子緩和率測定を行った。我々の非置換試料に対する結果を確認するとともに、分光器の向上によりさらに高温部まで測定することができた。^1H-NMRでは、50K以上でスピン格子緩和率が大きく増大し130K近傍でピークをとる。これはメチル基の運動の効果によるもので、電子状態に関する情報がマスクされている。一方、^<13>C-NMRでは、スピン格子緩和率は100K以上でも分子運動による影響は見られず、伝導電子に関する直接的な情報が得られた。さらに、今回、80K以下で急激に反強磁性揺らぎが発達していることを見いだした。これは、80K近傍で電子状態に何かしらの変化が生じていることを示唆しているおり、^<13>C-NMRによって初めて明らかとされた結果である。^<13>C-NMR測定により、これまで有意義な情報の得られなかった常磁性相・超伝導相に関する研究の展望が開けた。さらに、圧力下における金属安定化の機構、超伝導発現機構、第二絶縁相の電子状態を調べるとともに、単結晶資料による反強磁性磁気構造の決定を試みている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 中村敏和 他: "ESR and NMR Investigatiion of β'-R_4Z[Pd(dmit)_2]_2"Synth. Metals. 103. 2142-2142 (1999)
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[Publications] 中村敏和 他: "Low Temperature Electronic States of β'-type Pd(dmit)_2 Compounds"Mol.Crys.Liq.Cryst.. (印刷中).