1999 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物人工染色体を用いた転写調節にかかわるクロマチン構造の解析
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11154212
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
舛本 寛 名古屋大学, 大学院・研究科, 講師 (70229384)
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Keywords | セントロメア / テロメア / アルフォイドDNA / 酵母人工染色体(YAC) / ヒト人工染色体 / CENP-B |
Research Abstract |
本研究では人工染色体前駆体YACに挿入されている薬剤耐性遺伝子(ブラストサイジン抵抗性遺伝子)を利用し、YACDNAを動物細胞へ導入し、人工染色体が形成された場合と、宿主染色体へ挿入された場合とで、これら遺伝子の発現と機能するセントロメアの構造形成との関連について詳しく調べた。人工染色体を効率よく形成した株をリクローニングし、100%の細胞で人工染色体を保持しているリクローン株と一旦形成された人工染色体が宿主16番染色体短腕の末端に挿入されているリクローン株を得た。構造解析の結果どちらのリクローン株も導入YACの構造には変化がなかったにもかかわらず、宿主染色体末端へ挿入された株ではYAC挿入部位へのセントロメア蛋白(CENP-A,-B,-C等)の集合が検出できない細胞が多数を占めており、セントロメアとしては不活性化していることが判明した。この株を薬剤選択圧をかけない状態で長期に培養してもYAC挿入部位は安定に維持され、薬剤耐性遺伝子(マーカー)からの転写は大幅に低下し、YAC挿入部位のヘテロクロマチン化が進行しているものと考えられた。ところがこの株を薬剤による選択圧をかけ培養を続けるとYAC挿入部位が宿主染色体から切り出され人工染色体の再形成を高頻度で引き起こした。再形成された人工染色体上にはセントロメア蛋白群の集合が起こっており、セントロメアの再活性化が起こると共に耐性遺伝子からの転写は大幅に増加していた。この結果から2つの可能性、(1)薬剤による選択圧をかけることで耐性遺伝子からの転写が活発に起こっている細胞を選択することになり、このような細胞では耐性遺伝子からの活発な転写が不活性化(ヘテロクロマチン化)セントロメアをリモデリングし、DNA配列に依存したセントロメア蛋白の再集合が引き起こされ、再度機能的なセントロメア(キネトコア)が形成された可能性、(2)ヘテロクロマチン化により遺伝子のサイレント化は引き起こされるが、機能するセントロメアクロマチン(キネトコア)に挿入された薬剤耐性遺伝子からの転写はむしろ活発に起こっており、このような機能的セントロメアを保持していたYAC部位のみが人工染色体となって選択されてきた可能性、などが考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] M. Ikeno: "Construction of YAC-based mammalian artificial chromosomes"Nature Biotech.. 16. 431-439 (1998)
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[Publications] H. Masumoto: "Assay of cetromere function using a human artificial chromosome"Chromosoma. 107. 406-416 (1998)