1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11156222
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
徳永 万喜洋 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助教授 (00192659)
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Keywords | 生体分子モーター / アクチン / ミオシン / ルースカップリング / 分子機構 |
Research Abstract |
昨年度までに、新しく開発した1分子捕捉操作技術を用い、1個のATP加水分解中に約5.3nmのステップが複数回(最大5回)起こって、アクチン・フィラメント上をミオシン頭部1分子が進むのが直接計測することに成功した。この5.3nmステップが、ミオシン頭部の構造変化に基づくものか、アクチン・モノマーの間隔に基づくものかを決定する実験を行った。ミオシン頭部(S1)を、BDTC(ビオチン化ペプチド)と制御軽鎖(RLC)とのフュージョンペプチドを用いてアビジン経由でガラス表面に結合させると、双頭のミオシンと同程度に速く滑り運動することを見つけている。この系において、BDTCとRLCとの間にグリシン・リッチであるフレキシブルなペプチドを導入し、滑りの運動の変化を計測した。最大12nmまで伸びうる柔らかいペプチドを導入しても、アクチンフィラメントは、導入する前の8割の速さで滑ることがわかった。柔らかい部分の挿入が動きを阻害しないことを論証するため、以下の3つの実験を行った。フレキシブル・ペプチドを導入しても、ATPase活性には変化がほとんど見られなかった。電子顕微鏡により、導入したフレキシブル・ペプチドが、期待される柔らかさを実際に示すことを確認した。滑り運動中のアクチン位置の画像解析から、滑り運行中もフレキシブル・ペプチドの柔らかさが保持され、アクチンフィラメントが揺らぎながら滑っていることを確かめた。 これらの知見は、従来言われてきた構造変化説では説明できず、生体分子モニターの分子機構は、揺らぎを使った確率的なルースカップリング・メカニズムであることを示している。
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[Publications] K.Kitamura: "A single myosin head moves along an actin filament with regular steps of 5.3 nenometers"Nature. 397. 129-134 (1999)
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[Publications] 廣島通夫: "分子間相互作用のイメージング -分子間力顕微鏡と1分子技術-"電子顕微鏡. 34(2). 151-153 (1999)
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[Publications] 徳永万喜洋: "ミオシン1分子は1個のATP分解の間に複数ステップで働く"蛋白質・核酸・酵素. 44(11). 1584-1589 (1999)
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[Publications] 徳永万喜洋: "1分子技術で観るミオシンの分子メカニズム"細胞工学. 18(11). 1641-1647 (1999)
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[Publications] 喜多村和郎: "ミオシン頭部1分子はATP分解1回で複数ステップで働く"生理物理. (印刷中). (2000)
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[Publications] 船津高志: "生命科学を拓く新しい光技術"共立出版. 186 (1999)