1999 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学的手法を用いたケモカインによる造血分化決定機構の解析
Project/Area Number |
11162210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩倉 洋一郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10089120)
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Keywords | ケモカイン / Cre / loxpシステム / CXCR4 |
Research Abstract |
我々はケモカインが担う遊走能以外の機能、特に、造血幹細胞の分化、増殖課程における役割について注目し、KOマウスを用いた個体レベルでの解析を計画した。ケモカインの中には発生段階で重要な働きをするものもあり、全身性あるいは初期発生段階からその遺伝子を欠損させることは致死的である場合があるので、我々はCre/1oxPシステムを導入し、部位特異的・時期特異的に遺伝子を欠損指せる方法を試みることにした。既にloxP配列に挿まれたCXCR4遺伝子をノックインしたマウスを作製するとともに、CD34プロモーター(熊本大・須田博士より供与)の制御下でCreリコンビナーゼを発現するTgマウスを作製した。このほか、Mx-Cre-TgマウスをRajewskyより、1ck-Cre-Tgマウスを竹田博士(大阪大)より、CD19-Cre-Tgマウスを北村博士(東京理科大)より分与して頂いた。現在、これらのマウスの掛け合わせを進めており、CD34-Cre-Tgマウスと掛け合わせた結果では、骨髄細胞、リンパ節細胞等でCreリコンビナーゼ依存的にCXCR4遺伝子が欠損することを確認した。また、この掛け合わせの場合、CXCR4ホモ欠損マウスが生まれてこないことがわかり、CD34分子を発現する細胞でCXCR4が胎児期に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、Mx-Cre-Tgマウスとの掛け合わせの場合polyI・polyC投与による発現誘導により、骨髄細胞でほぼ完全にCXCR4を欠損させることができた。FACScanを用いた解析の結果、胸線細胞の中でもCD4+/CD8+細胞群の減少が確認され、詳細な減少機構について解析中である。Mx-Cre-Tgマウスの場合polyI polyC投与によって誘導されるIFN-α/βが細胞増殖を抑制している可能性が考えられるので、外部からの刺激なしで胸線細胞特異的にCXCR4の欠損が可能である1ck-Cre-Tgマウスを用いて同様の解析を行う予定である。CXCR4ノックインマウスとCre-Tgマウスの掛け合わせでは、CD34マウスとの掛け合わせ以外はいずれも、子孫マウスは正常に成長し、生殖能力にも異常は認められていない。
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