Research Abstract |
本研究は,紀元前1000年紀の前半を中心に編集された,古インドアーリヤ語最古の散文文献から適切な部分を選んで翻訳し,詳細で多面的な注記・文法の説明・語彙集と共に,日本語で発表することを目指している。2年間に準備できた原稿は約10篇ほどについてであり,中5篇については,原典テキスト・翻訳・注解を入力し終え,ほぼ完成原稿の形になっている:(1)シュナハシェーパの物語,(2)プルーラヴァスとウルヴァシー,(3)マールターンダの物語-人と死の起源-,(4)マヌを巡る神話群(:マヌと洪水,マヌと娘イダー,マヌの妻とアスラたちの祭官),(5)ブリグの異界巡り。完了した部分は印刷して約80頁分に当たり,原典の校訂・注記,その他の付属篇を合わせて,計120頁程に相当するものと思われる。今後さらに2年程で,計約20篇を取り上げて原稿を完成させ,最終的には500頁程の出版を目指したい。予想以上に詳細な注記が必要であることがわかり,また,作業の進展に伴って,文献全体の位置と,原典の個々の個所についての理解が深まり,その分,文法・語彙・内容等に亙る調査・研究も,当初考えた以上に必要となってきた。その成果も挙がりつつあるが,できれば全てを,完成した際の出版中に組み入れたい。特に,古代インドの実生活,生活文化の中身に対する理解は文献理解の基本でありながら,これまでの研究に見るべきものが比較的少なく,牧畜移動生活,農耕,植民活動などに焦点を当てた章を設け,適切な文献個所を抜粋して紹介したい。特殊文字・記号の処理方法には未だやや不満な点が残っている。古いファイルや欧米で入力された資料の利用は,Word2000の出現によって大幅に推進されることとなった。二次文献の整備(購入,コピー),従って,その検討については,未だ不十分な点が残る。
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