2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164214
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱田 正美 神戸大学, 文学部, 教授 (30109061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野元 晋 慶応義塾大学, 言語文化研究所, 講師 (10276420)
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
清水 和裕 神戸大学, 文学部, 助教授 (70274404)
|
Keywords | イスラーム / 伝承知 / 理性知 / イスラーム国家論 / イスラーム神秘主義 / 啓示(コーラン) / ハディース / ネオ・プラトニズム |
Research Abstract |
イスラームという宗教体系は、コーランや預言者ムハンマドの言行に由来する「伝承知」と、ギリシャ哲学の移入とともに発展した人間理性の自由な発動を鼓舞する「理性知」とのふたつの要素から成り立っている。この二者が、時には排斥し合いまた時には互いに結び合うことにより、イスラームの歴史は極めて多彩な展開を遂げてきた。研究代表者濱田は、オスマン帝国における国家論(君主論)に関する著作や東トルキスタンの歴史書を対象として、具体的政治過程において「伝承知』がいかにして現実に適用されたかという問題を検討し、これらの著作では、「伝承知』への追従は極めて理性的になされている、換言すると、現実への理性的対応が要求する「伝承知」が断章取義的に採用されていることを確認した。研究分担者鎌田は、12イマーム・シーア派の名かで展開した神秘思想を対象とし、イスラームの啓示によって与えられた直観がいかに理論的に表現されるかといいう問題を17世紀のイランの哲学者、ムッラー・サドラーの著作に基づいて探求した。その結果、この哲学者がいかにコーランを読むかを具体的に解明し、伝承知から距離を置くタイプの哲学者の営為との比較を通じて、ふたつのタイプの「知」の関わり合いの豊かさを明らかに出来た。また分担者野元は、新プラトン主義をイスマーイール・シーア派に導入した最初の世代の人であるアブー・ハーティム・アッラーズィーの主著のひとつ『訂正の書』を対象として、新プラトン主義とイスマーイール派の狭義の内的な関係を探る名かで、伝承知と理性知の共存、融合の様相を解明した。分担者清水は、ヒラール・サービーの『カリフ宮廷のしきたり』を翻訳し(近刊)、伝承知と理性知の問題が、アッバース朝宮廷の日常生活の面にいかに現れるかの具体相を知るうえで、重要な貢献を行った。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Masami HAMADA: "Jihad, hijra et 《devoir du sel》 dans l'histoire du Turkestan oriental"Turcica. 33. 35-61 (2002)
-
[Publications] Masami HAMADA: "Introduction ; Les mausolees du bassin du Tarim, deux millenaires d'histoire"Journal of the History of Sufism. 3. 1-6 (2002)
-
[Publications] Masami HAMADA: "Le mausolee et le culte de Satuq Bughra Khan"Journal of the History of Sufism. 3. 63-87 (2002)
-
[Publications] 野元晋: "ファーティマ朝初期のイスマーイール派運動における思想家ラーズィーの位置、その『訂正の書』Kitab al-lslahからの一視点"オリエント. 44-2. 148-162 (2002)
-
[Publications] 鎌田繁: "イスラームの伝統的知の体系とその変容"東京大学東洋文化研究所創立60周年記念論集. (近刊).