1999 Fiscal Year Annual Research Report
古典学の再構築・調整班研究B01「伝承と受容(世界)」
Project/Area Number |
11164216
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中務 哲郎 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50093282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大月 康弘 一橋大学, 経済学部, 助教授 (70223873)
丘山 新 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90185489)
西村 重雄 九州大学, 法学部, 教授 (30005821)
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Keywords | 予型論 / ホメロス / ウェルギリウス / 大乗仏教 |
Research Abstract |
調整班には多彩な分野の方々が参加しているので、まず分野間・研究者相互の理解を深めるため、三名の方に報告と問題提起をしていただき、それを元に討論を行った。秋山学氏「西洋古典の伝承史における予型論的視点の影響について」は、旧約聖書の中に新約聖書のキリストや後の教会に対する約束預言を見いだす聖書学的な予型論を、広く相異なる文化伝統の間に応用して、ウェルギリウス『牧歌4』(生まれくる幼子とキリストの誕生)およびホメロス『オデュッセイア』(マストに縛り付けられる英雄と十字架上のキリスト)の例を解釈史・写本伝承の中で考察した。西村賀子氏「ヨーロッパにおける古典の伝承」は、ギリシア・ローマの古典がいかにして保存され伝承されてきたかを、物理的要因・社会的要因・宗教的要因の三つの側面から説き明かし、紙料の開発・字体の進化・印刷術と大量生産、これらが古いテクストの保存と伝承のためには利害の両面があったことを指摘した。早島理氏「インド大乗仏教瑜伽行学派における聖典(アーガマ)継承の研究」は、大蔵経テキストデータベースの作成状況と利用法を説明し、問題点の指摘(資金、著作権、外字、海外の同様のプロジェクトとの協力・連繋)に続いて、世俗諦・勝義諦、三性説、蓋所有性、如所有性を手がかりに瑜伽行学派における聖典(アーガマ)継承について所論を展開した。発表後の討論は基本的な質問から忌憚ない意見まで活発に取り交わされて極めて有益であった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 中務哲郎: "古代ギリシアの教養-教育・自由・民主政-"岩波ブックレット「新しい教養を拓く」. 4-15 (1999)
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[Publications] 中務哲郎: "キケロにおける魂の不死について"ニューズレター「古典学の再構築」. 5. 48-49 (2000)
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[Publications] 大月康弘: "12世紀コンスタンティノープルの帝国病院"講座地中海世界史(歴史学研究会編.青木書店). 3. 232-255 (1999)
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[Publications] 大月康弘: "ビザンツ帝国財政と寄進-マリアの遺産とイヴィロン修道院-"一橋論叢. 122-4. 32-52 (1999)
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[Publications] 大月康弘: "ビザンツ社会の寄進文書-事例に見る諸特徴-"歴史学研究. 737. (2000)
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[Publications] 丘山新: "「祖堂集」牛頭法融草疏證"東文研紀要. 39-83 (2000)
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[Publications] 中務哲郎: "キケロ-選集第9巻(共訳)"岩波書店. 425 (1999)
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[Publications] 丘山新: "現代語訳 阿含経III"平川出版. (2000)