1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164218
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 純 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70107522)
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Keywords | ルター / エディション / 死生観 / アウグスティヌス / リラのニコラウス / サンヴィクトルのフーゴー |
Research Abstract |
本研究は、ルター最初期、エルフルト時代のテクスト(神学書への書き込み)のエディション・注解をその第1段階とするものであるが、今年度は研究の重要な部分を占める資料調査のための海外出張を2000年2月29日から3月28日に予定しているため、現在(2月28日)のところ、そこで期待される成果を除いた報告となる。 第1には、これまで確認されていなかった引用の出典確認が、挙げられる。ギリシア教父クリソストモス、ローマ詩人ユーウェナーリス、ラテン教父アウグスティヌス、中世神学者サンヴィクトルのフーゴー、中世聖書学者リラのニコラウス、同ブルゴスのパウルスなどの出典が確認できた。また、最新のものを中心とした研究文献の購入・活用により、現在の研究状況を確認した。さらに、研究の先の段階を先取りすることになったが、ルターの行なった思想史的転換の1側面として、その死生観を、ゲルマン戦士社会を基盤とする神話・英雄歌の死生観、初期教会以来中世末に至るキリスト教の死生観の流れを背景に捉え、関根清三編『死生観と生命倫理』(東大出版会1999年)への寄稿とした。どれも現代とは異なって「死から生を捉える」ものといえるが、英雄的死ないし滅びの中の光輝という1点に集中するゲルマン神話・英雄歌の死生観とも、死後の審判を定位点として一刻一刻を「裁かれる者」として生きる中世キリスト教の死生観とも異なって、一刻一刻神の絶対の恵みによってのみ生きるとするルターの死生観では、存在が決定的に開かれたものになっており、死そのものも、生の最終的な開けとして受け取られて、そこから生を捉えることが生を開かれたものにしてゆく契機となっている。 研究出張では、引用の出典確認とともに、ルターが用いた版の確認作業を進め、また専門研究者との情報交換を行なうことになっている。
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Research Products
(1 results)