1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 光男 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70166974)
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Keywords | 士大夫 / 朝鮮 / 近世 / 古典籍 |
Research Abstract |
本年度は主として「中国古典籍の流布と利用」について調査と分析を行った。 1.日本における文献調査と分析 東京大学阿川文庫・天理図書館今西文庫・沖縄県立図書館・那覇市資料室において朝鮮本の蔵書調査を行い、朝鮮で翻刻され日本・琉球に流入してた中国古典籍について概要を把握した。阿川文庫は、漢城と慶尚道在住士大夫の蔵書が主流であることを確認した。李氏朝鮮時代には日本・琉球にとって朝鮮が、中国古典籍の重要な供給源の一つであることを確認した。 2.韓国における現地調査と分析 漢城居住士大夫として、4人の大提学と4人の不遷位を輩出して近世朝鮮きっての名門に数えられる延安李氏館派洞(16世紀の政治家・官僚・学者である月沙李廷亀の子孫たち)に対する調査を行った。館洞派はごく小規模の家門であるが、その一門の中に流れる古典教養と中国古典籍に対する学識の保持によって、近世朝鮮きっての名門の一つと数えられた。 地方在住士大夫として、慶尚道丹城県居住の地域名門・郷案士族の末裔である安東権氏宗正公派一門の蔵書を調査し、政府・王室に流入した中国古典籍が活字および木版の形態で官僚に配布され、さらにそれが写本によって地方在住士大夫間にも拡散していった様相を観察した。 以上2事例は、李氏朝鮮時代の士大夫の社会的威信形成とその維持の上で、中国古典籍に関する学識が重要な役割を果たしたことを確認した。
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Research Products
(1 results)