1999 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム哲学におけるアリストテレス『デ・アニマ』受容と霊魂論の展開
Project/Area Number |
11164224
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
小林 春夫 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (70242229)
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Keywords | イスラーム哲学 / イブン・スィーナー / スフラワルディー / 霊魂論 / シャハラズーリー / アリストテレス |
Research Abstract |
本年度の研究実績は次の3点に集約される。 1、イブン・スィーナーの『救済の書』(al-Najat)の「霊魂論」に該当する個所(ed. Kurd-Ali,Cairo,1938,ではpp,157-193に対応する。)の翻訳・分析・注釈。本論考は、イスラーム哲学の「確立期」における霊魂論の標準的著作であり、アリストテレスの『デ・アニマ』受容の一つの到達点と見なすことができる。翻訳にあたっては、各種の版を比較検討するとともに、本論考の基となった『治癒の書』の対応部分との比較も行った。 2、スフラワルディーの『光の拝殿』(Hayakil al-Nur)の翻訳・分析・注釈。本書は、「展開期」の霊魂論を明らかにする上で重要な著作であり、またそれ以降のイスラーム哲学の発展にも大きな影響を与えている。翻訳にあたっては、上記イブン・スィーナーの霊魂論との比較を行うとともに、16世紀の哲学者ダウワーニ一の注釈を参照し、後世への思想的影響を明らかにすることに努めた。 3、スフラワルディーおよびシャハラズーリーの著作に関する写本調査と校訂。前者については『開示の書』(al-Talwihat)、とくにその「霊魂論」の部分を校訂・分析すべく数種の写本を調査した。現在、「人間霊魂」にかんする個所の校訂が完了している。また、後者については、『比喩と象徴』(al-Rumuz wa'l-Amthal)を校訂すべく3種の写本を調査した。現在、全体のほぼ半分の校訂を終えている。 以上に挙げた実績のうち、1と2については『中世思想原典集成』(12年度中に刊行予定)に発表する。3については、12年度末に報告書のかたちで発表する予定である。
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