1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164230
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
斎藤 明 三重大学, 人文学部, 教授 (80170489)
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Keywords | シャーンティデーヴァ / 『入菩薩行論』 / 『入菩薩行論解説[細疏]』 |
Research Abstract |
本年度は、スタイン収集本(Stein No.628)にもとづいて、敦煌出土チベット語写本に伝承される『入菩薩行論』初期本(9章本)の第1,2,6,7,8章の5つの章のローマ字体テキストを作成した。また、これと併せて、第8章については同本に対する唯一の注釈文献である著者・訳者不明の『入菩薩行論解説[細疏]』の訳注作業を行った。 この作業と並行して、今年度はとくに『入菩薩行論解説[細疏]』の成立および翻訳年代の問題に焦点をあてて考察を加えた。その結果については、「『入菩薩行論解説[細疏]』の成立年代をめぐって」と題して、第50回・印度学仏教学会学術大会において口頭発表した。『入菩薩行論』本偈の引用部分の訳文、その他の引用経論とその翻訳文、思想的特徴、使用する術語等の検討を通して本研究者が推定した同注釈の成立年代は、シャーンタラクシタ(c.725-788)およびカマラシーラ(c.740-795)の活躍年代を上限とし、『入菩薩行論』初期本(9章本)のチベット訳が行われた9世紀初頭からそう下らない時代範囲-したがって、およそ8世紀後半から9世紀初頭-であり、翻訳もまた『入菩薩行論』の訳者であるペルツェクないしその周辺と考えられるところから、『デンカルマ目録』(824/836)成立以降の9世紀前半から半ばにかけて、と推定した。 なお今年度はまた、以上の考察の基礎作業として、『入菩薩行論解説[細疏]』を現行のチベット語大蔵経に編入するうえで大きな貢献をなしたプトゥン・リンチェンドゥプ(1290-1364)と同書との関係を、かれ自身の注釈文献である『入菩薩行論注釈「菩提心を照明する月光」』の分析等を通して論じた(「プトゥンと『入菩薩行論解説[細疏]』」『印度学仏教学研究』48-2所収)。
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Research Products
(2 results)