1999 Fiscal Year Annual Research Report
いわゆるティムール朝ルネサンス時代におけるペルシア語・チャガタイ語文献の研究
Project/Area Number |
11164244
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 一之 京都大学, 文学研究科, 助教授 (70221934)
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Keywords | ヘラート / ペルシア古典文学 / チャガタイ・トルコ文学 / 学芸保護 |
Research Abstract |
1.今年度最初に研究対象としたのは、ティムール朝末期のへラートで活躍したペルシア詩人サイフィーが詠んだ詩集『驚くべき者たちの諸技術』で、この作品は「シャフル・アーシューブ(またはシャフル・アンギーズ)」と呼ばれる特異なジャンルに属する。シャフル・アーシューブとは、特定の都市およびその住民に対する称賛や非難を詠んだ韻文作品のことで、ペルシア古典文学におけるシャフル・アーシューブの位置付けや変容、およびヘラートを対象とした上述サイフィーの作品を具体的に検討することによって、いわゆる「ティムール朝ルネサンス」をもたらした都市社会の成熟や全般的文化水準の上昇を裏付けることができた。この研究成果の一部は、本特定領域研究調整班(原典班)の研究集会(平成11年11月13日京大会館)において口頭で発表した。その内容は、補訂の上、近々学会誌に発表する予定である。 2.資料収集活動としては、平成11年12月20日から平成12年1月21日まで海外出張(トルコ、エジプト、シリア、イラン)を行なった。特に、トルコのスレイマニエ図書館とヌル・オスマニエ図書館、イランのテヘラン大学中央図書館と国会図書館に所蔵されるペルシア語写本については、かなり充実した調査を行なうことができた。研究課題に直接関わる成果としては、ティムール朝期の著明文人による書式集・書簡集(一般に「インシャー作品」と呼ばれる)の写本所在状況を明らかにすることができた。 また、イギリスの大英図書館とケンブリッジ大学図書館、およびフランスの国立図書館に所蔵される写本の内、本研究に不可欠と思われるものについては、京都大学附属図書館を通じてマイクロフィルムを入手し、紙に焼付けて利用し易い形にした。
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