1999 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における西洋古典文化の受容と教養文化の変容に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
11164250
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筒井 清忠 京都大学, 文学研究科, 教授 (50121398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 紀行 京都大学, 文学研究科, 助教授 (20212037)
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Keywords | 歴史社会学 / 文化接触 / 教養 / 階層文化 / 出版文化 |
Research Abstract |
本研究では、近代日本における西洋文化の一連の受容過程のなかで、文学・思想の特定の著作が〈古典〉として選択的に受け入れられ、日本人の教養文化を変容させていった過程を、主に社会的・制度的側面から解明することをめざしている。今年度は、近代日本の出版文化や高等教育などに関わる資料の収集を進めながら、理想史・文学史・メディア史・教育史・比較文学など関連諸分野における先行研究および社会学的分析視角の検討を主に行なった。 研究はまだ継続中であるため、まとまった研究成果が披露できる段階ではないが、暫定的に次のようなことは言えそうである。日本の「古典」の制度化過程においては学校教育制度(特に中等教育のカリキュラム)が中心的機能を果たしたのに対して、西洋の「古典」の受容過程においてはむしろ古典の翻訳・出版が最も基本的な要因であった。とりわけ、当初刊行点数の3分の1以上を西洋文学の古典に充てていた岩波文庫(1927年刊行開始)は、これ以降の読書人の必読書目の選別において中心的な役割を果たした。昭和初期の出版市場の拡大によって、当初は外国語の知識のある学歴エリートにほぼ独占されていた西洋の言語文化が、知的中間層の正統的階層文化に組み込まれていったと考えられる。 なお、今年度は大正期から昭和初期を中心に研究したこともあって、日本の知識人文化における国学・漢学と西洋文化の相対的位置関係の解明というテーマには着手できていない。これは来年度の課題としたい。
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