2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164253
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
米井 力也 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (50178373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヨリッセン エンゲルベルト 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (10252397)
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Keywords | キリシタン / 日本 / フィリピン / インド / 大航海時代 / 翻訳 / 修道会 |
Research Abstract |
研究代表者は、日本で刊行されたキリシタン文献の一つである教理入門書『どちりいなきりしたん』と同時代のフィリピンにおいて刊行されたDoctrina Christiana (タガログ語-スペイン語対訳)の比較を通して、翻訳におけるそれぞれの文化との軋轢や融合の問題について分析し、とりわけ異界すなわち死後の世界についてキリスト教の異界観念の受容に差異があったことをあきらかにした。また、日本におけるキリシタン時代の聖書翻訳とスペイン統治時代以降のフィリピンにおける受難詩Pasyonに代表される聖書受容の比較を通して、ここにも両文化の差異にもとづく翻訳の問題を分析している。 研究分担者は、昨年度に続き、ポルトガル-インド-マカオ-日本と連なるイエズス会の活動とスペイン-メキシコ-フィリッピン-日本と連なるドミニコ会・フランシスコ会等托鉢修道会の活動の比較対照を通して、ヨーロッパ人宣教師や日本人キリシタンが直面した異文化間の軋轢、大航海時代のヨーロッパと日本の歴史的な位置にかんする実証的分析をおこなった。昨年度に開始したインドの研究者との共同研究も新たな課題をめぐってさらなる展開を迎え、大航海時代の軋轢が現代インド文学にも波紋を及ぼしていることを小説やエッセイの分析によって明らかにしている。 ヨーロッパ文化の基底をなすキリスト教と、イスラム教・ヒンドゥ教・仏教など「異教」との「対立」が焦点化されている現代において、近代の曙とも言うべき大航海時代以降、世界的にくりひろげられた諸事象をどのように把握するかという問題はきわめてアクチュアルなものといえる。ポスト・コロニアリズムの諸問題は、植民地主義時代の再検討なくして分析することはできないだろう。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 米井 力也: "異界の変奏:大航海時代の異言語接触"文学. 2-5. 8-23 (2001)
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[Publications] E・ヨリッセン: "The Portuguese Approach to Asia in the Early 16th Century"Josef Kreiner, ed., Rukyu in World History. 85-116 (2001)
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[Publications] E・ヨリッセン: "Unseen Boundaries between Not so Different Worlds"京都大学総合人間学部紀要. 8. 19-34 (2001)